TOM OXLEY/NME

Photo: TOM OXLEY/NME

先週、アークティック・モンキーズの輝かしきデビュー・アルバム『ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット』から10年を迎えた。その誕生を祝うため、アークティック・モンキーズの人気が爆発する直前のインタヴューを思い出してみよう。『NME』によるアークティック・モンキーズの初インタヴューの全文をお送りする。

シェフィールド出身のアークティック・モンキーズは、新たなヨークシャー・シーンにおけるザ・リバティーンズへの解答であり、2005年必見のライヴ・バンドだ。前回、彼らが故郷で演奏した際には、完売のライヴを窓の外から盗み見るためだけに30マイル(約50キロメートル)も離れた場所からやってきたファンがいたほどである。ロンドンでの初めてのライヴでは、空っぽの会場で演奏するはずだったフロントマンのアレックス・ターナーが、最後には満員でそのライヴを終えている。また、2日前のノッティンガムのライヴでは、ステージに上ってメンバーを触ろうとするファンに遮られ、『NME』の取材陣はバンドを観ることもできなかった。若き日のポール・ウェラーを思わせるアレックス・ターナーは、「信じられないよ」と話す。「演奏している自分を見上げて、こう言っている自分自身がいるんだ。『ありえない!』ってね」

ドラマーのマット・ヘルダースとギタリストのジェイミー・クック、そしてベーシストのアンディ・ニコルソン(現在は脱退)で構成されるアークティック・モンキーズは、つい2年前まではヒップホップ好きの普通の学校の仲間4人組で、休み時間にバスの待合所でホワイト・ライトニング(大衆向けの安酒)を飲んで酔っ払っているような友だち同士だった。しかし、いまや、インディーズでは一番大きなバンドが彼らだ。「俺とクッキーが、その年のクリスマスにギターを手に入れたんだ」とアレックスは回想する。「3月になっても数コードしか弾けるようにならなかった俺に対して、クッキーはジェームズ・ボンドのテーマを全部弾けるようになってた。自分ももっと頑張らないとって気づいたね」。その後、数ヶ月の本気の練習期間を経て、アークティック・モンキーズはまったく違うステージに足を踏み入れたのだ。

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「シェフィールドで演奏した時、俺が歌い始めるとすぐに観客たちが歌い返してくれたんだ」とアレックスがはにかみながら話す。「『何かが起こってるぞ!』と思ったよ」。ライヴ後の状況を追ってみると、バンドが最近立ち上げたウェブサイト上にて無料で配り始めた初期のデモ3曲はインターネット上のインディーズ・ファンの間で話題となり、流出したオアシスのアルバムよりも素早く拡散されることとなった。

しかし、奇妙なネーミングの「モンキーズ」の台頭は(一説では、このバンドはある夜シェフィールドでゲリラ・ライヴを行った後、浮浪者に命名されたという噂もある)、ピート・ドハーティとカール・バラーが再来したように、単に自暴自棄な若者がギターに出会ったというだけでは終わらなかった。

TOM OXLEY/NME

Photo: TOM OXLEY/NME

ポスト・ガラージのメロディアックな爆音が素晴らしいのと共に、アレックス・ターナーの清々しいほどにでたらめで自由な歌詞が、マイク・スキナーのようにスマートで田舎町特有のジャイヴを通して、怪しげで愉快なシェフィールドのストリート・ライフを綴った物語を織りなしている。“Scummy(When the Sun Goes Down)”を例に挙げると、彼らがリハーサルを行っていたシェフィールドのニープセンドで目にした、売春婦がたむろする光景を描いている(「So who’s that girl there? I wonder what wrong so that she had to roam the streets/She doesn’t do major credit cards – I doubt she does receipts(あそこにいる女の子は誰だ? 何が問題だったのだろう、通りをうろつくはめになったのは/彼女はクレジットカードのことを習っていない、レシートのことも)」)。また、デビュー・シングル“Fake Tales Of San Francisco”では、アレックス・ターナーが地元のライヴ会場で働いていた頃、次々流行したものに乗り替える人々や偽物のロックンローラー達を観察して書いた曲だ(「Yes I’m going to tell you all my problems/You’re not from New York City, you’re from Rotherham(俺の問題点を全部教えてやるよ/ニューヨーク・シティ出身じゃなく、ロザラム出身なのさ)」)。

「学生時代からいろいろ書き続けているよ」とアレックス・ターナーは認めている。「友達が気付く前から書いているんだ。学生の頃はどうしたってクリエイティヴになっちゃうだろ? 自虐的になりがちだしね。バンドを始めた時だって、歌詞は話し合うのが恥ずかしいって部分で、最初はくだらないことだけ書いていた。でも、いつも俺はこっそり書き溜めていて、ある日、俺は『これじゃだめだ』と思ったんだ」

今や彼らを自重させるものはなく、カイザー・チーフスとザ・クリブスを筆頭に沸いていたヨークシャーのシーンの枠内にすら留まらない。

「『俺たちはシェフィールド出身だから、それ以外はクソだ』なんて視野の狭い奴にはなりたくないよ。そういった姿勢も理解できない」とアレックス・ターナーは眉をひそめている。「ルーツ・マヌーヴァが『俺はいろいろなシーンの奴らに愛情を持っているが、固定観念にとらわれた奴らは俺に何も抱いていない』と言っていたようにね」。最後にマット・ヘルダースは「それと、トリッキーな(カイザー・チーフスの)リッキー・ウィルソンはイラつくよね」と声高に語ってみせる。

伝えられるところによると、アークティック・モンキーズのデビュー・ヘッドライン・ツアーのチケットは既にeBayの猛犬たちの手中にあるという。そして、「リッキー・ウィルソンは神」と書かれたピンバッジより相当高額になるようだ。どんな大騒ぎになるかを見るには、しぶしぶ大枚を叩くしかないようだ。

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