ビリー・アイリッシュの“bad guy”をNovelbrightが公式カヴァーしたことを受けて、Novelbrightより竹中雄大(Vo)と山田海斗(Gt)の2人にインタヴューさせてもらった。2013年にオリジナル・メンバーで結成されたNovelbrightは、今年の8月17日に“Sunny drop”でメジャー・デビューを果たしている。瞬く間に世界的アイコンとなったビリー・アイリッシュをどう見ているのか、話を聞いた。
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https://Novelbright.lnk.to/badguy
――まず、今回、ビリー・アイリッシュのカヴァーをすることになった経緯を教えてもらえますか?
竹中雄大「それはユニバーサルミュージック(所属レコード会社)からお話をいただいて、それでやらせてもらいますという感じになりました」
――ビリー・アイリッシュの音楽は聴いていましたか?
竹中雄大「もちろん」
山田海斗「めちゃくちゃ好きだったんで」
竹中雄大「僕も普通に聴いていますけど、彼(山田海斗)はめっちゃ好きなんですよ」
――これまでどんな音楽を聴いてきたか、それぞれ教えてもらってもいいですか?
竹中雄大「僕は音楽を始めることになった原点とも言えるアーティストはゆずとONE OK ROCKなんですけど、日常的にはほぼ洋楽ばかりを聴いていて。カラオケに行くと洋楽ばっかり歌うんですけど、好きになったきっかけがパラモアというバンドで、18歳ぐらいの時ですかね。パラモアのことが大好きになって、そこからすごく洋楽にのめり込んでいって。親父もバンドをやっていたんですけど、親父がザ・ビートルズとか、エリック・クラプトンとか、レッド・ツェッペリンとか、ディープ・パープルとかをずっと家で流している家庭だったんで、クイーンとか、昔の往年のロックを聴いていたんですよね。でも、すごい好きになったきっかけはパラモアで、2年前に来日した時もチケットを取って観に行って、そこからはもう本当にいろいろですね。今は洋楽ポップが好きで、特に好きなのはデュア・リパとかエイバ・マックスとかリタ・オラとか、女性シンガーが好きで、男性だとショーン・メンデスとかチャーリー・プースとかエド・シーランとか、名前だけ挙げるとすごくミーハーみたいな感じですけど、売れているところの洋楽ポップスのアーティストですかね。テイラー・スウィフトとエド・シーランはライヴも観に行きましたし、すごく幅広く聴きますね。ヒップホップも聴きますし」
山田海斗「僕はB’zが好きで、音楽を始めたので、昔はお二人が聴いてきたものを聴いていました。レッド・ツェッペリンとかディープ・パープルとかガンズ・アンド・ローゼズとか、普通にロックというのを聴いていたりしたんですけど、その時はロック以外を聴いたらダサいという変なこだわりがあって、ポップスとかを聴いたりしなかったんですよね。それ以降は雄大と聴いているものが同じで、デュア・リパとかリタ・オラとかポップスも結構聴きますし、ヒップホップも好きなんで、エミネムとかはめっちゃ好きですね。今、好きなのはビリー・アイリッシュとかシーアとかですかね。あとは脱力感のあるフランスのポップスも好きですね」
――今回、ビリー・アイリッシュの“bad guy”のカヴァーでは雄大さん得意の口笛も登場しますけど、口笛というのは雄大さんにとってどういうものですか?
竹中雄大「音楽的なことを最初に初めたのが口笛で、バンドで活動するよりも前にやっていたことなんです。そういう意味でいくと自分を形成するものですよね」
――今回、ビリー・アイリッシュの“bad guy”をカヴァーしてみて気づいたこと、分かったことというのはありますか?
竹中雄大「僕はこれまで“bad guy”のような曲を歌ってこなかったので、新たな自分を発見できましたね。こういう曲も意外と歌えるんだ、というか(笑)。声のタッチがソフトなんですよね。やわらかいというか、軽いというか、そういう声のタッチで歌うっていうことがあまりなかったので、こういう自分を見つけられたというよりは成長できたという感じですね。カヴァーをやらせてもらうことによって、自分の声の幅を見つけられたというか、ヴォーカリストとして、どんな曲でも歌える人になりたいので、そういう意味では新たな自分を見いだせましたね」
――海斗さんはどうですか?
山田海斗「僕はカヴァーをするのが難しかったなと思いましたね。やっぱり原曲がある分、オリジナルのアーティストに対して失礼になるのもよくないし、それでいて同じような感じになるのも意味がないし、どう違う風に見せて、どうリスペクトを残して表現すればいいのかが難しかったんですよね」
――特にあの曲はギターという点では非常に難しい曲ですよね。
山田海斗「元々、ベースとリズムが主体となっている曲なので……」
竹中雄大「よう入れ込みまくったもんな」
山田海斗「そう、頑張った(笑)」
――Novelbrightさんの音楽を聴かせてもらって、2010年代までの邦楽ロックの王道を精度高く表現できるバンドだと思ったんです。でも、今回カヴァーしたビリー・アイリッシュの音楽ってそことはまた違うものじゃないですか。そういう洋楽的な部分と邦楽的な部分の兼ね合いというのは、どのように考えています?
竹中雄大「今は確かにそういう曲をシングルだったり、アルバムだったりで出していっているんですけど、今後自分たちの幅を見せていきたいというのはあります。だから今までみたいなNovelbrightっぽい曲、世間の人がイメージしているNovelbrightみたいな曲ももちろん作りますし、僕は個人的に洋楽が大好きで、もちろん世界にも行きたいと思っているので、洋楽のトレンドみたいなものも取り入れた曲も作りたいと思っています。全部英詞の曲ってまだ1曲しかないんですけど、今後増えていってもいいなと思います。自分たちの芯だけはブレずに、なんでもかんでもやったらいいというものでもないと思うので、急に全部ヒップホップみたいになってもよく分からないので、だからこそNovelbrightらしさみたいなものは残しつつ、その中で幅を見せていけたらとは思いますね」
山田海斗「僕もNovelbrightはJ-POPが守り続けてきたものをしっかり今やっているバンドだと思いますし、王道を自ら進んでいっているバンドだと思うので、洋楽的な要素をすべて取り入れるのは難しいんですけど、いろんな曲をやりたいと思っています。、バラエティ豊かな感じにしたいんで、今回のビリーのカヴァーも西部劇のような、言ったらちょっと笑っちゃうような要素を入れて、引っ掛かりみたいなものをちょっとつけるだけで全然違うものになったりするので、僕は日本のものも大事にしながらうまいこと合わせてカッコいいものにしたいですね。寄りすぎると、逆に僕らがやる意味がなくなっちゃうのかなと」
――Novelbrightに留まらず、日本の音楽の海外進出ということについてはどのように見ていますか?
竹中雄大「僕のイメージなんですけど、世界を最初から見据えて活動している日本のアーティストってなかなかいない気がしていて。例えば、アメリカのアーティストとか、イギリスのアーティストとかって最初から世界を見ている気がするんですよ。言語が英語というのもあるのかもしれないですけど、多分10年前のアジアのマーケットって日本が一番大きかったと思うんですけど、今って韓国の存在感が大きくて。韓国の全体の音楽シーンの意識が世界へ行こう、国を飛び出そうというものになっているんでしょうね。日本のアーティストってひとくくりにしてしまうと、海外志向じゃない国になってしまっていると思うんですけど、その中でそういう野望を持って頑張っているアーティストはいるわけで、日本も日本ならではの良き文化もあったりするんで、それが爆発的なヒットになったらいいなとは思いますけどね。それは僕らも含めて頑張りたいなと思います」
山田海斗「僕は日本の音楽が好きで、日本人なので、日本の音楽で海外に行きたいんですよね。海外で闘うためには海外の音楽でやらないといけないっていう風習がある気がしているんですけど、僕は日本のアーティストが外に出て売れるには日本の音楽じゃないと意味がないと思っているんですよ。そういうのを出せないと海外では勝負できないと思っているんで、海外だから海外のやり方でというのは違うと思います、僕はですけどね。だったら、最初からアメリカでやればいいじゃんと思いますしね。日本のものをしっかり残しながら、海外で勝負するという方向に持っていきたいですね」
――今後のキャリアについてはどのようなヴィジョンを持っていますか?
竹中雄大「現状まだまだで、夢が100個あるとしたら、まだ2個ぐらいしか叶ってないんですよ。始まったばっかりというか、メジャー・デビューもしたばっかりですし、本当に自分の影響力のなさに落ち込む時もあるんですよ。自分たちの渾身の1曲ができました。その曲を満を持してリリースします。ミュージック・ビデオを出しますってなった時に自分が思っているよりも伸びなくて、もうちょっと伸びてほしいなとか思うことが結構あって、何気ない日常の投稿がふとバズるってことってありますけど、自分が一番届けたいと思うものが一番多くの人に届いて拡散してほしい時に、まだまだ影響力のなさを感じる瞬間というのがすごく多くて、だから当然曲を作ったり、いいライヴをやったりっていう音楽的な活動は当然やっていくんですけど、これからの1年は自分の影響力を高める活動を並行して頑張っていきたいと思いますね。発信力を高めたいんですよね」
山田海斗「僕も今の現状に満足できてない部分が多くて、昔よりはいろんな人に知ってもらえるようになってはきているんですけど、一つの音楽だけじゃなくて、Novelbrightの他の音楽も聴いてもらえるようなバンドになりたいですね。有名な曲だけじゃなくて、他の曲も聴きたいと思われるようなバンドになっていきたいと思います。その1曲のファンで終わってしまうと、その曲に飽きたら、Novelbrightもういいやってなってしまうんで、僕らの魅力をしっかり出すことによって、他の曲も聴きたいなって思う見え方を目指していきたいですね」
――影響力とか発信力とかって単純に数字にできない信頼みたいなものも含まれる言葉だと思うんですけど、今のソーシャル・メディアについてはそれぞれどのように捉えていますか? いい面も悪い面もあると思うんですけど。
竹中雄大「もちろん、あることないこと誰でも発信できてしまう時代なんで、誹謗中傷が昔よりも飛び交うような時代になったとは思うんですけど、昔よりもいいものがちゃんと広まる時代になったなとは思います。今ももちろんタイアップとかは大事ですけど、昔は大人が押し出せば売れるというような流れがあったと思うんですよね。今は誰でもスターになれる時代になったなと思っていて、やっぱりYouTubeだったりTikTokだったり、ツイッターもインスタグラムもそうですけど、SNSを観る人が多くなったことによって、伝わるスピードが速くなりましたし、自分たちだけでもやっていけるような時代にはなってきているなって。そういう意味で音楽に限らず、エンタテインメントの仕事をする人たちにはいい時代になったと思いますね」
山田海斗「僕はそこまで雄大みたいにSNSを使いこなせていない人間なんですけど(笑)、急に人がスターになれる時代になったなと思いますし、その分、敵も多いとは思いますけどね。周りの目を気にしすぎると、うまくは使えないメディアだとも思っていて、他の人の意見に惑わされずに自分をどれだけ信じれるか、それが大事な時代だと思いますね」
――まさにビリー・アイリッシュもそうしたソーシャル・メディア時代を生きているわけですが、ビリー・アイリッシュの画期的なところってどこだと思いますか?
竹中雄大「それこそまさに海斗くんが言った日本のよさも伝えた上で海外にも自分たちの存在を知らしめたいというのと同じものを感じるというか、世に出てきた時にイヤフォンで聴いて、それまで音楽のASMRみたいなものってなかったじゃないですか。囁くように歌いますけど、それが新しいなって。新しいことをしている人ってカッコいいんですよね。自分でそれを切り拓いていくから、それには賛否も起こるんでしょうけど、なにか先陣を切って新しいことをしている人って本当にすごいと思うんで、キャラクターも強烈ですし、唯一無二というか、あの年齢でビリー・アイリッシュというカリスマを作り上げるなんてすごい人だと思います」
山田海斗「僕はビリ―を好きになったきっかけが“bury a friend”っていう曲をたまたまYouTubeで観た時になんだろうこの曲ってなったことだったんですけど、ウィスパー・ヴォイスをメインとして取り入れてる歌声とあの曲のキュイーンという音は歯医者さんの器具の音を入れていたりして、普段耳にしている環境音を取り入れて音楽としてリズムに取り入れてやっているのがすごいと思いました。目の付け所が全然違うなとも思いましたし、ビリー・アイリッシュの曲ってお兄さんが自分の音楽を世に出したいというところから始まって、たまたまビリーに歌ってもらったものをサウンドクラウドで公開したらバズったというのも今っぽいと思いますし、それを受けてお兄さんがビリーをプロデュースして売り込んでいくというのもすごいですよね。ファッション・アイコンとしても、アーティストとしてもビリーを世に知らしめたビリーもすごいですけど、お兄さんもすごいなって僕は思います」
――最後に今年2020年は新型コロナウイルスの年になってしまいましたが、新型コロナウイルスについてはどのように捉えていますか?
竹中雄大「悲劇ですね。バンドってやっぱりライヴが主戦場なんで、それができないっていうのが本当に大打撃ですね。だからこそ、自分を見つめ直せる機会もあったから、いいところもあったと思うんですけど、こればっかりは前向きに考えなきゃしょうがないんですけど、でも、やっぱりライヴができないっていうのは大打撃ですね」
山田海斗「ありきたりな日常を送ってきた人類に対する罪だと思います。僕はそう思いますね。だから、この期間中にみんな気づけたことがいっぱいあると思うんで、会える時に会っておかなくちゃとも思いましたし、いつもみたいに明日が来るとは限らないとも思いましたし…本当に思ったんですよね。普通にのうのうと生きてきたのは時間がもったいなかったなと思います。今ってやりたいのにできない時間が多い中、できたのにやってなかった時間も過ごしてきたって考えると、すごい時間がもったいなかったなって感じた時間ではありましたね。だから、一つ一つ、1日1日を大事に生きていかなきゃあかんなって思いました」
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