R.E.M.のマイケル・スタイプとマイク・ミルズは現地時間11月18日にロンドンのボーダーラインで開催されたQ&Aセッションで、ドナルド・トランプの大統領就任に対する不安について触れ、彼の当選が、幻滅したアメリカの有権者を刺激するものになればと語っている。
「今回起こったことについてはいくつか理由があるんだ。そのほとんどは不快なものなんだけどさ。僕は本当にこれからの4年間、自分たちの国について心配してるんだ」とマイク・ミルズは語っている。会場となったボーダーラインは1991年にビンゴ・ハンド・ジョブ名義で伝説的なシークレット・ライヴを行った会場で、『アウト・オブ・タイム』のデラックス盤が発売されるのを記念して、この日のイベントはフェイスブックでも生中継が行われた。「でも、おそらく何もしないことが巨大な悪の原因になり得ることを人々に分からせる刺激的な出来事だったんじゃないかな。だから、今回の出来事から生じる変革の動きを僕らは手にすることができるのか、見てみたいと思うんだ」
「明らかにあれは権力層に対する抗議の投票だよね」とマイケル・スタイプは続けている。「ヒラリー・クリントンは権力層をすごく体現しているからね。だから、人々は人種差別主義や外国人排斥や狭量な考えに投票してしまったんだ。彼らは単に組織を粉々にしようと思ってただけなんだよ。僕ら全員、アメリカからのニュースに動揺していて、世界の別の場所、例えばこことかで起こっているように見てたんだ。そして、トルコやオーストラリア、フランスといった他の国々に対する、その影響について見ていたんだ。今回の結果が向かう方向について、すごく喜んでる人はないと思ってる。僕らは警戒し続けなきゃいけないし、悲しみを乗り越えなくちゃいけないし、うまくやってかなくちゃいけない。僕はバーニー・サンダースのキャンペーンを熱心に行って、彼はいい候補だと思ってたんだ。大統領府を高めることができるかもしれない人だってね。僕はそんなにヒラリー・クリントンのファンじゃない。でも、明らかに彼女は責任の取れる人だけど、ドナルド・トランプはそうじゃないと思ってるんだ」
「アメリカの中流階級は民主党と共和党によって空洞化されてしまったんだ。数字を出してみるけど、34年間、多くの人々が社会的に無視され、忘れ去られてきたんだ」とマイク・ミルズは続けている。「トランプが正しかった一つのことは、ワシントンは完全に腐敗した場所だということだよ。ほとんどの権力の中枢だというのにね。今回のことでいいことがあるとしたら、多分、ワシントンで起きている、あまりにも偏狭な行動が減っていくことだろうね。彼らは自分たちの周りで起きている小さなバブルの外で起きていることについてなんか考えてないんだ。おそらく、これによってこれまで無視してきた人々の話にみんなが耳を傾けるようになるよ。かつてアメリカには巨大な中流階級がいた。そして、たくさんの要因のせいで、それはもう存在していないんだ。だから、自分の子供たちが自分たちよりもいい暮らしをするという希望や楽観や理由を持っていた人々が、そうしたものを持てなくなってしまったんだ。それで、メッセージを送るために彼らはこんなふうに投票したんだよ。そのメッセージが聞き入れらればと思うよ」
二人は25周年に合わせて再発された『アウト・オブ・タイム』の制作についても語り、独特のソングライティング・プロセスを明かしている。「マイケルが部屋にいなくて、彼が歌ってくれたものを思い出せない時は、どんなメロディだったかも分からなかったんだ」とマイク・ミルズは語っている。「すごくポップなヒット曲だと思った曲がいくつかあったんだけど、いざマイケルが戻ってくると、そんなにポップなヒット曲じゃなかったんだよね。でも、今ではそうした曲が僕のお気にいりの曲の一つになってるよ。(『グリーン』に収録の)“World Leader Pretend”なんかも最もラジオ・フレンドリーな曲になると思ってたけど、そうはならなかったしね。でも、いまだに素晴らしい曲なんだ。だから、曲はマイケルのところに行く前にそれ自体が興味深いものでなければならなかったし、ヴォーカルや歌のメロディが加わる前に聴くべき価値のあるなにか素晴らしいものや面白いコードなんかを持ってなければならなかったんだ」
「みんなは僕に完璧に録り終えたトラックを渡してくれて、それで僕はそこから始めて、なにか書こうとしたんだよ」とマイケル・スタイプは明かしている。「ピーター(・バック)がどんなヴォーカル進行をそのトラックから聴いていたか、ほのめかすようなちょっとしたリフをレコーディングしていたことに『アクセラレイト』まで気づかなかったんだ。『アクセラレイト』まで教えてくれなかったんだよ。僕はそれを聴いて、それに歌を乗せようとしたんだけどね。きっと彼らは頭に来てたんだね!」
R.E.M.の今後の活動については言及されることはなく、ビンゴ・ハンド・ジョブ名義でのライヴについて思い返し、ブラッドリー・クーパーがこのライヴの大ファンであることを明かしている。「1年前にこの日の夜のブートレッグがR.E.M.のキャリアでも最もお気にいりなんだって教えてくれたんだ」とマイケル・スタイプは説明している。「ビンゴ・ハンド・ジョブってプリントされたタオルまで作ってね、あれはクールだと思ったね」
「そのタオルに他に何て書いてあったか覚えてる?」とマイク・ミルズはマイケル・スタイプに訊き返している。「『衛生のために消毒しました』って書かれてね。ごちゃ混ぜだったよね。あれがプロモーションのためにイギリスでやった唯一のライヴなんだ。たまたま情報が入ってきて、すごく多くの人が会場に入ろうとして、チケットがすごく高い価格になってしまったというのを聞いて、ヘマをしでかしたことが決定的になったんだ。それで僕らはたくさん飲んで、たくさんのバカバカしいことが起きて、ピーターが創作ダンスをやったりしてね。ヴォーギングとかやってたよ」
「あの時やったカヴァー曲はみんなが簡単に歌えるためのものだったんだよね。だけど、僕がその歌詞を分かってなかったんだ」とマイケル・スタイプは冗談を飛ばしている。「ステージに上がる前になんで曲をわざわざ聴かなかったのか、分からないんだよね」
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