ザ・ビートルズはビートルマニア絶頂の1966年にサンフランシスコのキャンドルスティック・パークで行った記念碑的なショウを最後に永遠にツアーを止めてしまうことになったが、そうする意図は決してなかったとリンゴ・スターが明かしている。
ロン・ハワードによる映画『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』に関連した『モジョ』誌のインタヴューのなかで、リンゴ・スターは「ザ・ビートルズが消え去ったことなんて一度もないんだ。そして、戻ってくることだって可能だったんだよ」と語っている。
その後、ライヴに戻ってくることはなかったが、最後にもう1度だけ、1969年にサヴィル・ロウにある当時のアップル本社の屋上でライヴを行っている。
ポール・マッカートニーは、バンドがライヴを終わりにしようと決断した瞬間について説明している。「その時までには僕たちはすっかりうんざりしていて、実際にステンレスの箱のなかに戻ったんだ」と、キャンドルスティック・パークのライヴを去る際に使用した武装された車のことを振り返っている。この車は映画の中で見ることができる。
「今見れば、風変わりな2001年のSFか何かのように見えるね。実際、風変わりな場所だったんだ。僕が思い出すのは……警察がやるようなひどい扱いって分かるだろう? そんな感じで、ヴァンの後ろに乗せられるんだけど、縛られているわけじゃなくてさ。それで、誰かを殺したって非難されるわけだけど、まあ、そんな感じさ。僕たちはヴァンの後ろに乗って突然立ち去ることになって、それで『もうやめだ!』っていう感じになったんだ。ついにね。ジョン(・レノン)とジョージ(・ハリスン)はその前からツアーについてブツブツ言っていてね、そしてついに全員が『こんなことクソくらえ!』となった。それが、決定的な瞬間だよ」
キャンドルスティック・パークでライヴが行われたのは、1963年から始まった一連の大規模な世界ツアーにより盛り上がりを見せたビートルマニア現象の最盛期だった。『アポロ13』や『ラッシュ/プライドと友情』を手掛け、ドキュメンタリーの監督を務めたロン・ハワードはインタヴューの中で、ザ・ビートルズが解散する原因になったとも考えられるビートルマニア現象の「過激化」について議論している。
「少し衝突もあってね、終わりの頃はうんざりしていたんだ」と、ポール・マッカートニーは説明している。
ライヴ・パフォーマンスの最中、ファンの叫び声があまりに大きいため音がまったく聴こえず、ドラムのリンゴ・スターは他のメンバーの肩の動きを見て曲の進行を把握しなくてはならなかったという。「僕らは会場のPAを使っていてね、巨大なアンプがあったんだけど、僕はメンバーの背中を見なければならなかった。何も聴こえなかったからね。だから、みんなが(肩を小刻みに)やっていれば、『そうか、今はここだ!』と理解したんだ。僕たちはここをやっているんだってね。それから、これはあくまでも僕の意見だけど、僕たちはうまく演奏できていたとは言い難かったね」
「最初は、その叫び声にも興奮したよ。サイン会をしたり写真を撮ったり、そういうことのすべてにね」とポール・マッカートニーは付け加えている。「それで、しばらくしたら、どんどんつまらなくなっていったんだ」
そして、ポール・マッカートニーは次のように続けている。「リンゴが言ったように、何も聴こえないほどの叫び声だったんだ。だから、本当にすべての動きをやったし、それで『イエーイ!』みたいなこともやったわけだ。だって何かが起きていて、それをやらなければ小さなマッチ棒のような男たちがいるだけで何も聴こえないわけなんだから」
ザ・ビートルズで存命しているメンバーである二人は他にもインタヴューの中で、アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットが、ザ・ビートルズの終焉を示唆しているのではないかという憶測を否定し、バンドの創作における方向性の転換のようなものだと説明している。
1966年のキャンドルスティック・パークでの公演の後、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は1967年にリリースしており、『アビイ・ロード』や『レット・イット・ビー』を含むさらに5枚のアルバムをリリースしている。
映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』は9月22日に公開される。
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