レッド・ホット・チリ・ペッパーズが5年前に通算10作目のアルバムをリリースする準備をしていた時、ついにバンドの復活が実現するように見えた。2年間の休養という充電期間を経て、脱退したジョン・フルシアンテに代わり、ツアー要員として参加していたジョシュ・クリングホッファーが正式メンバーとして加入し、未来は輝いて見えた。だが、クリングホッファーが実力を発揮するには1年の準備期間では短すぎたため、『アイム・ウィズ・ユー』は期待はずれとなったが、ファンはもっと良い次のアルバムを期待していた。そして、今回リリースされた『ザ・ゲッタウェイ』では進歩が見られるものの、同バンドがうまく復活を成し遂げたとは言いがたい。
もちろん、今でもフリーのベース・ソロは「となりのサインフェルド」のテーマ曲のようだし、アンソニー・キーディスはしょっちゅう意味不明なことをまくし立てる。(“Detroit”の歌詞はこんな風だ。「Am I on the right side or left side of your brain?(俺はお前の脳ミソの右側か左側か、どっちに存在するんだ?)」)。だが、少なくとも前進しようという意欲は感じられる。“Dark Necessities”についていえば、長めの追い詰められたようなイントロはまったく陰気な感じで、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの楽天的な雰囲気に合っていない。おまけに、陶酔感のあるピアノを多用したミドル・エイト部分では、我々は本当に料理でもしてるような気分になる。“Go Robot”の不明瞭なシンセサイザーは陽気なLAの思い出をかき消してしまうが、プログレッシヴ風の“Dreams of a Samurai”では、彼らのサウンドが新しい、刺激的な方向へ向かっている。問題なのは彼らが習慣に陥ってしまうことなのだ。
“We Turn Red”は洗練されたヴォーカルと垢抜けないリフが特徴だが、“The Longest Wave”は穏やかで、横になって録音したのではないかと思われるほどだ。“Goodbye Angels”はアンソニー・キーディスがやけに賢く見え、「Say goodbye my love, I can see it in your sou(さよならと言ってくれ、愛しい君。 君の心がわかるんだ)」と歌っている。しかし、“This Ticonderoga”ではアンソニー・キーディスは子どもじみて、「I call my best friend ‘Flea’(僕は親友を『フリー』と呼ぶ)」と歌っている。アルバムにはあまり多くのリスクを犯したくない慎重な姿勢が見て取れるが、30年にわたる成功の後ではそれも理解できる。しかし、まずまずのアルバムを量産することで満足すべきではない。1980年代半ばの西海岸のクラブで一世を風靡したファンク・ロックのパイオニアが、まだ燃え続けてほしいと期待するのは当然だ。
彼らに新しいことを取り入れる才能がないというわけではない。力強いドラマー、チャド・スミスは非常に優れているし、ベーシストのフリーにしても、卓越した技能を持つミュージシャンだ。ただ、無難なサウンドになっていることを彼らは理解していない。先月、アンソニー・キーディスは新しい楽曲を「今まで書いてきたどの楽曲にも劣らないよ」と言っていた。うまく書かれた楽曲たちではあるものの、それは厳密には正しいとは言えないだろう。やっぱり並外れたことをしたとまでは言えないのだ。
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リリース詳細は以下の通り。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ / Red Hot Chili Peppers
ニュー・アルバム
『ザ・ゲッタウェイ』原題:The Getaway
2016年6月17日リリース
品番:WPCR-17366|価格:¥2,300 +税
トラックリスト
1. ザ・ゲッタウェイ / The Getaway
2. ダーク・ネセシティーズ / Dark Necessities
3. ウィ・ターン・レッド / We Turn Red
4. ザ・ロンゲスト・ウエーヴ / The Longest Wave
5. グッドバイ・エンジェルス / Goodbye Angels
6. シック・ラヴ / Sick Love
7. ゴー・ロボット / Go Robot
8. フィースティング・オン・ザ・フラワーズ / Feasting on the Flowers
9. デトロイト / Detroit
10. ジス・タイコンデロガ / This Ticonderoga
11. アンコール / Encore
12. ザ・ハンター / The Hunter
13. ドリームス・オブ・ア・サムライ / Dreams of a Samurai
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