
Photo: 宇宙大使☆スター
NME Japanでは今年のフジロックフェスティバルでベスト・アクトの1〜20位を選んでみました。とはいっても、多くのアーティストが出演するフジロックです。すべてのアーティストを観ることはできません。なので、観られた範囲の中で、あくまで独断で、編集部で観たいと思ったアーティストのなかから、議論を重ねて、このランキングを作成してみました。みなさんのベスト・アクトとぜひ較べてみてください。
20位 マーシン(7/25 RED MARQUEE)

Photo: Daiki Miura
マーシン自身がパフォーマンスの途中で語っていたこの言葉が彼のステージを何よりも体現していたと思う。「ギター、ヒトツダケ」。フィンガースタイルによるパーカッシヴな超技工派プレイで知られるポーランド出身のマーシンことマーシン・パトルザレクはフジロックフェスティバル初出演となったが、堂々たるパフォーマンスで雨上がりとなった初日のRED MARQUEEを沸かせてみせた。ライヴを観られたのは途中からだったのだけれど、そのプレイを堪能するには十分な時間で、ギター1本でフィジカルなリアクションを観客から引き出してみせるベートーヴェンの“運命”をはじめ、叙情的かつ情熱的なプレイで魅せる“Classical Dragon”、繊細さと超絶技巧が同居するモーツァルトの“Requiem”、そして「すべての日本人の女の子」に捧げられた“I Don’t Write About Girls”を経て、最後に披露されたのは十八番の“Carmen”で、日本でライヴを行う夢が叶ったと言っていた彼の清々しい表情が印象的だった。
19位 エムドゥ・モクター(7/25 WHITE STAGE)

Photo: Taio Konishi
リード・ギターが前面に出たサイケデリックなスタイルと言うと、往年のクラシック・ロックを思い浮かべるむきもあるかもしれないが、まったく異形のものになっているのが面白い。ニジェール共和国出身のギタリスト、エムドゥ・モクターの名前がそのままバンド名になっている彼らだが、“Kamane Tarhanin”から始まったライヴは新鮮な驚きに満ちたものだった。まずはエムドゥ・モクターの演奏が目を引く。サウスポーの指弾きで、それであれだけの音圧が出ることに慄く。アンプは全員オレンジだ。“Takoba”ではエムドゥ・モクターがステージを降りて、観客の目の前でソロを繰り広げる光景もあったが、その後も何度もステージを降りていく。“Sousoume Tamacheq”といった曲ではドラマーのスレイマン・イブラヒムの演奏にも圧倒されつつ、最後は“Afrique Victime”で、エムドゥ・モクターはステージを降りるどころか客席にまで入っていく。かつてのロックの雰囲気を感じさせながらも、そこに予定調和はまったくなかった。
18位 ニューダッド(7/26 RED MARQUEE)

Photo: Hachi Ooshio
2日目の午後、かなり強烈な雨で満員になったRED MARQUEEに駆けつける形で観られたのがニューダッドだった。今年3月にベーシストのカーラ・ジョシが脱退して、現在はジュリー・ドーソン率いる3人+サポート陣で活動を続けているニューダッドだが、そこには5月に出たEP『セーフ』、そして9月にリリースが控えている新作『アルラー』への覚悟があったはずで、それはこの日のパフォーマンスにも表れていた。新曲が数多く投下されたセットリストもそうだったが、何よりバンドとしての足腰がしっかりしていることに驚かされる。既発曲で聴けたのは“Let Go”や最新シングルの“Roobosh”あたりだったが、新曲からも不安なくアートとしてのロックの魅力が立ち上がってくる。最後に演奏されたのはデビュー作『マドラー』の冒頭を飾る“Angel”で、その鳴っているサウンドは1980年代後半から1990年代前半にタイムスリップしたかのようだが、バンドの地に足のついた演奏力によって同時に未来も感じさせてくれた。
17位 OK GO(7/25 WHITE STAGE)

Photo: Ruriko Inagaki
個性的なアクトが百花繚乱とも言えるフジロックフェスティバルだが、これだけ安心感をもって観られるアーティストも珍しい。定番の変わらぬ味を守り続けている町中華のような存在、それがOK GOだった。ミュージック・ビデオの話題性に隠れながら、誰しもが楽しめる良質なパワー・ポップを生み出し続けている彼らだが、その地肩の強さは健在だった。最新作のイントロダクションを経て、“This Too Shall Pass”から始まったライヴはおそらく初めて曲を聴いた人にも分かるだろう明快さで、「オツカレサマデス」、「ワタシハニホンゴガシャベレマセン。バカなアメリカ人」といったMCを挟みながら“Get Over It”、“White Knuckles”と、カタログの楽曲と共に熱量を上げていく。“Obsession”の後にはファンからの質問に答えて、「日本の好きな食べ物」発表会も行われたが、いろいろ大変なことが起こっている世の中を吹っ切っていく爽快さを持った彼らの音楽は初日のWHITE STAGEに風通しの良さを与えてくれていた。
16位 フェイ・ウェブスター(7/26 WHITE STAGE)
フェイ・ウェブスター本人がステージに現れる前に映画『怪盗グルー』シリーズでお馴染みのミニオンになったフェイ・ウェブスターが“But Not Kiss”を歌う映像が流れる。彼女は『ポケモン』好きで、ヨーヨーなどの趣味でも知られるが、そんなイメージの裏側にあるお茶目さや人柄が少しだけ垣間見れたステージだったと思う。ライヴ本編も“But Not Kiss”から始まったが、別れを描いた最新作『アンダードレスト・アット・ザ・シンフォニー』の曲を次々と演奏していくのだけど、やはりマット・“ピストル”・ストッセルによるペダル・スティールが素晴らしい。彼のプレイが現実のノスタルジーとドリーミーな別世界を繋ぐ媒介となっているようなところがあって、「サッド・ガール」といった表面的なイメージに留まらない、彼女の音楽の奥行きを見せてくれる。“Right Side of My Neck”や“Better Distractions”といった過去作の曲も交えつつ、彼女の音楽があくまで人と繋がるものであることを感じさせてくれた。
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