ボブ・ディランは映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』に意図的に作り話を盛り込んだ逸話が明らかになっている。
映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は60年代中盤にアコースティックからエレクトリック・ギターに転向したボブ・ディランを描いた作品で、映画はアメリカで12月25日に、日本で2025年2月28日に公開される。本作はイライジャ・ウォルドの著作『ディラン・ゴーズ・エレクトリック!』を原作としたもので、ボブ・ディランはエグゼクティヴ・プロデューサーを務めている。
監督のジェームズ・マンゴールド、俳優のティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニングらは米『ローリング・ストーン』誌で映画が出来上がっていた経緯について語っている。
ボブ・ディランはロサンゼルスでジェームズ・マンゴールドと何度かミーティングを行って、脚本を一行一行確認したという。「ジェームズ・マンゴールドはボブ・ディランの注釈があちこちに入った脚本を持っているんだ」とティモシー・シャラメは語っている。「それを貸してくれよと言っても、渡してくれることはないだろうね」
「ボブ・ディランは何をやろうとしているのか知りたがっていた」とジェームズ・マンゴールド監督は語っている。「この人はどういう人なのか? アホじゃないのか? 理解しているのか? 誰かと手を組むということになれば、当然の疑問だと思うよ」
ボブ・ディランはティモシー・シャラメとスーズ・ロトロを想定した架空の人物、シルヴィー・ルッソ役のエル・ファニングが言い合いになるシーンに台詞を付け加えたという。「『わざわざ戻ってこないでくれ』というようなものだった」とエル・ファニングは語っている。「実際にそういう言い合いがあったわけで、ボブ・ディランは何かを思い出したのかもしれない。もしくは言ったことで後悔していることがあったのかもしれない」
また、エル・ファニングはボブ・ディランがスーズ・ロトロの本名を使わないでほしいと思っていることを伝えられたと明かしている。ジェームズ・マンゴールド監督は当初受け入れられなかったという。「すごくプライベートな人物で、こういうことは望んでいなかったんだと思う」とエル・ファニングは説明している。「彼女はきっとボブ・ディランにとって特別で神聖な人だった」
ボブ・ディランは映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』に不正確なシーンを少なくとも1つは意図的に盛り込んだことも明らかになっている。エドワード・ノートンによれば、ジェームズ・マンゴールド監督が世間の反応を心配したところ、ボブ・ディランは彼を見つめて、「他の人が思うことについて関係ないだろ?」と語ったという。
「彼はまさにトラブルメイカーなんだよ」とエドワード・ノートンは語り、「曖昧さや歪曲をまさに楽しんでいるんだ」と続けている。ボブ・ディランはこれまでも真実を弄ぶ傾向があり、彼の自叙伝『ボブ・ディラン自伝』でも部分的にフィクションが盛り込まれ、ネットフリックスで配信されているマーティン・スコセッシとのドキュメンタリー『ローリング・サンダー・レヴュー:マーティン・スコセッシが描くボブ・ディラン伝説』でもフィクションの要素が入っている。
一方、ティモシー・シャラメはヴォーカル・コーチ、ギター教師、喋り方のコーチ、動き方のコーチ、ハーモニカのコーチらと共に30曲を演奏できるように準備したという。本作ではすべて生演奏で収録されていると謳われている。「スタジオでは再現できないんだ」とティモシー・シャラメは語っている。「前もってレコーディングされたギターに合わせて歌ったら、突然、声から動きがなくなってしまうんだよね」しかし、ティモシー・シャラメはまだボブ・ディランに会ったことも話したこともなく、ボブ・ディランが撮影現場を訪れたこともないという。
エル・ファニングは撮影現場でティモシー・シャラメが歌ったのを初めて聴いた時に涙してしまったと語っている。「オーディトリアムに座っていたんだけど、バックのアーティストたちと一緒に座っていたら、ジェームズ・マンゴールド監督がティモシー・シャラメを登場させて、ライヴを披露させたの。“Masters of War”と“‘A Hard Rain’s A-Gonna Fall”をやってくれたんだけど、『すごい』と思った」
「みんな震えていた。誰かがそんなことをするなんて現実とは思えなかったから。完璧だった。でも、物真似じゃない。ティミーであり、ボブだった。美しい融合よね。すごかった」
先日、ティモシー・シャラメは“Subterranean Homesick Blues”を歌いながら撮影の様々な場面を振り返る動画も公開している。
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