ブリング・ミー・ザ・ホライズンのオリヴァー・サイクスは『NME』に対して新作『ポスト・ヒューマン:ネクスト・ジェン』、ダウンロード・フェスティバルのヘッドライナー、SFをテーマとしたライヴ、最新シングル“AmEN!”について語っている。
2020年発表の『ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』に続く新作はダウンロード・フェスティバル出演の直前に9月15日にリリースされることが発表されている。
最新シングル“AmEN!”にはリル・ウージー・ヴァートに加えてグラスジョーのダリル・パルンボが参加している。「最初にハマったバンドはリンキン・パークだけど、グラスジョーを知って、音楽に夢中になったんだ。そして、シンガーになりたいことが分かった。だから、このアルバムはそれへのオマージュなんだ」とオリヴァー・サイクスはダウンロード・フェスティバルのバックステージで『NME』に語っている。
彼は次のように続けている。「ハイパーポップなアルバムだとは言わない。でも、そうした世界観の影響は受けている。音楽で感じられる反抗的で、たちの悪い、肉迫した感じに憧れていた。エモやハードコア、スクリーモにハマった時に自分が惹かれたのはそういうものだった」
「そうしたものが俺たちの音楽になかったわけじゃないけど、バンドが大きくなるにつれて、洗練されていくものだから、その逆を行きたかった。タガが外れた感じで行こうってね。すべてのエッジをスムースにしてしまうのを止めにしようとしたんだ」
オリヴァー・サイクスは「自分たちの表現したいもの、表現方法に際限をつけることなく」「このアルバムを純粋に楽しめるものにしたかった」と説明している。
「『スクリームをなくせばラジオでかかるのに』とか、そういったことはまったくない」とオリヴァー・サイクスは語っている。「ブリング・ミー・ザ・ホライズンが大きなバンドになる見込みが生まれる前の頃に再び繋がったような感じなんだ。当時は『どんなものを作りたいのか?』ということ以外なかった。だからその頃に立ち返ってみたんだ」
オリヴァー・サイクスはアルバムがリリースされることに「興奮している」が、「まだ存在していない」とも語っている。
「どんなものにしたいかは分かっている」としてオリヴァー・サイクスはブリング・ミー・ザ・ホライズンについては「すべてが綱渡りなんだ」と語っている。「90%まで完成させることはすぐにできるんだけど、残りの10%が難しいんだ」
“AmEN!”についても昨年8月の時点でほぼ完成していたが、最終的に完成したのはリリース1週間前の5月後半だったという。
「曲をネクスト・レベルに持っていく方法というのを常に探しているんだ。ノスタルジックなものであっても、ブリング・ミー・ザ・ホライズンがこれまでにやってないことをやりたいんだよ」と彼は語っている。「歳をとるにつれて、新しいストーリーラインを考えるのが難しくなってくる。でも、リリースしてライヴでやるとなると、みんなが聴きたい曲を一つ外すことになるわけだから。そうすることは重要なんだ」
「どの曲ももっともなものでなければならないし、いい曲じゃなきゃいけない。新しいものを提供していかなければならないわけで、だから時間がかかるんだよ」
当初、『ポスト・ヒューマン』シリーズには4つの章があるとされており、残りの各章から1曲ずつ完成させようとしたことで、プロジェクトはさらに遅れることになった。「あまりにたくさんのアイディアがあったということだよね」とオリヴァー・サイクスは説明して、今は1枚の作品に集中していると述べている。
加えて、オリヴァー・サイクスはダウンロード・フェスティバルの野心的なステージの指揮をとるのに忙しくしていた。新しい映像、ダンサー、進化した物語はパンデミック後の絶え間ないツアーを行っている間に準備されたものとなっている。「メンバーも今じゃみんな家族がいるから、彼らとの時間は貴重なんだよね。今月後半からはフォール・アウト・ボーイと6週間のツアーがあるから、そこでアルバムの残りを仕上げるつもりだよ」
ブリング・ミー・ザ・ホライズンはダウンロード・フェスティバルのステージでザ・チャーチ・オブ・ジェネシスという新たなコンセプトを登場させている。これは新作と今のライヴに共通するものとなっている。
オリヴァー・サイクスはザ・チャーチ・オブ・ジェネシスと新作の「ネクスト・ジェン」というアイディアが「人類に平和をもたらすことを使命とした」以前のツアーのために作られたAIのキャラクター、イヴから生まれたと説明している。
「AIによる悪夢のように、事態はうまくいかず、イヴの答えというのは人々を無表情、無自覚、無意見、無欲にするというものだった。言うまでもなく、ひどいアイディアだよね」と彼は語っている。「だから、ライヴの要素は壮大なSFのオペラになったんだ。『ネクスト・ジェン』というタイトルは元々、次の世代こそが唯一の希望であり、自分たちと同じ過ちをしないようにしなきゃいけないというところから来ているんだ」
「これは自分の教えられることでもあり、世間の注目を浴びながら成長して学んできたことでもある。俺はセレブじゃないけど、人々に好かれるか嫌われるかの両極端な存在であることがどういうことなのかは知っている。10年前は一般的なことじゃなかったけど、ソーシャル・メディアのおかげで誰もが理解するようになった。オンラインで誰かを引きずり降ろしたいという殺伐とした欲望みたいなものがそこにはあるんだ」
オリヴァー・サイクスは『ネクスト・ジェン』には「2つの別の時間軸」があり、その意味合いは「進みながら発展していく」ため、どう扱っていくをいまだに試行錯誤していると語っている。
例えば、“AmEN!”はオリヴァー・サイクスがオンラインへの投稿を控えていた理由について語るところから始まったが、「キャンセル・カルチャー、正義ポルノ、我々が生んだ気まぐれな社会」の問題へと発展していったという。
「オンラインのことから始まったんだけど、現実の問題に入っていくことになった」と彼は分断されたカルチャーについて語っている。「すべてに白黒がつけられ、草食男子か偏屈者にされてしまう。会話の余地がないんだ。首相や大統領でさえ自分のフォロワーを喜ばせることをすぐに言ってしまうんだよ」
アメリカやイギリスで広がっているさまざまな反トランスの法律や議論に触れながら、オリヴァー・サイクスは次のように続けている。「完全に理解できないことでも、誰しもを愛して、尊重しなきゃいけないんだよ」
「『ポスト・ヒューマン:ネクスト・ジェン』にはダークなことがたくさんある」と彼は続けている。「『ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』は黙示録的な内容だったけど、2枚目はその次に起こることなんだ」
オリヴァー・サイクスは新作について人類が「リハビリ・センター」での生活を余儀なくされ、そこで自分たちがこの星に何をしたかの物語を共有していく世界を想像してみたと語っている。
「リハビリ施設に入ること、依存症と闘うこと、いろんなものを解き明かしていくことがアナロジーになっているんだ」と彼は続けている。「多くは語りたくないけど、アルバムからの最初の曲は完成していて、まるでアルコール依存症患者の更生会のような内容なんだ。自分の罪についての話をして、一緒に乗り越えようとするんだよ」
オリヴァー・サイクスは新作について「啓示と共に紆余曲折」が描かれ、「間違ってしまっていることや解決しなければ、どれだけマズいことになるか」を見つめた作品になっていると語っている。
「“LosT”のように、ダークな話題を扱っていても、ある程度ユーモアと明るさがあるようにしたいと思っているんだ。どんなに恥ずかしいことでも思ったことを言っていいんだと思ってもらいたいんだよね」とオリヴァー・サイクスは述べて、「Watching Evangelion with a big fat slug of ketamine(大量のケタミンを飲んで『エヴァンゲリオン』を観る)」という歌詞の一節を例として挙げている。
「パンデミックの時に薬を使っていたことを知られたくなかったんだけど、なんでだろうと思った。友人には話しているわけで、バンドを聴いてくれている人たちには自分に何があったか話すような印象を持ってもらわないとと思った。あまり話に出ることがないわけで、大丈夫だと思えるにはそれが重要なことなんだよね」
当初、『ポスト・ヒューマン』のプロジェクトは4枚のEPでリリースされる予定だったが、新作はアルバムと評されている。しかし、オリヴァー・サイクスは「4枚の作品が出るんだ。全部が今年になるわけではなく、それぞれに自由度があるんだ」と当初の計画に近いものになることを明かしている。
「最も重要なのは突き詰めればこれが自分たちのアートで、それを忘れないようにすることだね。再生回数の話でも、お金の話でもない。アートの作品であることに集中すれば、大抵間違うことはないからね」
「『センピターナル』でやりたかったのは、自分がバンドに経験させてしまったことを許してもらう作品を作ることだった。世界を変えようとか、ビッグになろうなんて思わなかった。間違える時というのは、そういうことを考えている時なんだ。次に何が起こるかを気にせず、音楽を作ることに立ち返ろうとしているんだよ」
メタリカやスリップノットと並んでダウンロード・フェスティバルのヘッドライナーを務めることについてオリヴァー・サイクスは「現実とは思えない」と語っている。
「ここ何年かはフェスティバルのヘッドライナーを務めることの話があるけど、今でも確信はないよ。こうなったわけだけど、変な感じだし、緊張している。でも、ヘッドライナーを務めるバンドになった自信もあるんだ」
「2000年以降に出てきたロック・バンドはヘッドライナーを務めるのが難しいという事実を考えると、恐縮するけど、山を登って頂上に辿り着いたんだ。自分たちのことを証明したいし、他の人たちを圧倒したい。去年のレディング&リーズ・フェスティバルのように『彼らはヘッドライナーだ』と言ってもらえるようになりたい。いい時間を届けたいんだ」
「ダウンロード・フェスティバルでヘッドライナーを務めるのは、ロックやメタルの人々から許可証をもらう感じだからね。80000人が迎えてくれるなんてすごいよね。ロックが死にそうな感じで、そこから抜け出そうとした数年間もあったけど、今はその一員であることを誇りに思うよ」
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