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本日2月25日にUMEDA AKASOでジーザス&メリー・チェインの来日公演の初日となる大阪公演が行われた。

今回のライヴは、当サイト「NME Japan」が主催したもので、「NME JAPAN presents NME ICONIC ALBUM」と題され、1985年11月にリリースされたジーザス&メリー・チェインのデビュー・アルバム『サイコキャンディ』を30年の時を経て、ライヴで完全再現するものとなっている。

アルバム再現ライヴというのも、最近ではそれほど珍しいものではない。でも、ジーザス&メリー・チェインが、あの『サイコキャンディ』を再現するとなると、胸がザワザワするのはなぜだろう。『サイコキャンディ』がリリースされたのは、ワム!やデュラン・デュラン、カルチャー・クラブといった80年代サウンドが全盛の頃のことだ。そこに、ギターのフィードバックにまみれたザ・ビーチ・ボーイズのような甘いメロディの劇薬を、時代に投げ込んだのがジーザス&メリー・チェインだった。そう、彼らは当時のシーンに垂直に決定的なくさびを打ち込んでみせたバンドである。そして、それはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインをはじめ、多くのフォロワーを生み出すことになった。果たして30年を経て、その衝撃がどう甦るのか、それが気になってしょうがなかったのだ。

ライヴは先に『サイコキャンディ』以外の代表曲を演奏し、その後『サイコキャンディ』を完全再現するという二部構成なのだが、ライヴの冒頭を飾った1曲目、セカンド・アルバム『ダークランズ』からの“April Skies”の時点で、あまりにもジーザス&メリー・チェインで嬉しくなってしまった。音がデカい。客入れ時のBGMからして、やけに音量がデカかったのだが、それを余裕で上回る音量が響き渡る。そして、音の密度が濃い。どっしりとくる感じで、年を取って丸くなった部分などまったくない。そして、大阪の観客が熱い。どの曲もイントロの時点で歓声が上がる。2曲目はサード・アルバム『オートマティック』からの“Head On”、3曲目も同作からの“Blues From A Gun”。ディスコグラフィーから珠玉の曲を選ぶので、当然そうなるのだが、攻めの展開である。

そして、泣けたのが4曲目の“Some Candy Talking”だ。シングルでしかリリースされていない楽曲にもかかわらず、静と動の対比が見事なこの名曲をちゃんと演奏してくれる。再び『ダークランズ』からの“Nine Million Rainy Days”では、すっかり体調も問題ない様子のウィリアム・リードが長めのギターのサイドプレイを弾いてみせる。そして、その音が見事にうねるのだ。『ハニーズ・デッド』から唯一となった“Reverence”では、さらにバカデカいギターの音が炸裂して、ギターの起こすハウリングがむちゃくちゃカッコいい。そして、前半の最後の曲となったのは、この曲を忘れるわけにはいかないデビュー・シングル“Upside Down”。すさまじいノイズがウィリアムのギターからは炸裂し、ジムはクールな装いで自らの旋律を歌っていく。曲のなかで何度も表情を変えるウィリアムのギター・サウンドには感心させられる。オレンジのアンプと向き合いながら、フィードバックという概念を一新させられるサウンドを叩きつけて、7曲の前編があっという間に終了する。

メンバーはステージを降り、場内が暗闇に包まれるなか、1〜2分した頃だろうか、ドラマーのブライアン・ヤングが一人出てきて、『サイコキャンディ』の冒頭を飾る、あのドラムを叩き始める。次々とメンバーが出てきて、女性コーラスも加わって“Just Like Honey”が目の前で甦る。そして、奇っ怪なフィードバック・ノイズから畳み掛けるように“The Living End”がスタートする。『サイコキャンディ』の楽曲はどれも2〜3分台なので、駆け抜けていくように“The Living End”も終わってしまって、ミドル・テンポの“Taste The FLoor”はそのリズムで一回ペースを落ち着けていくような印象だ。そして、ジムの歌い出しから“The Hardest Floor”が始まる。重量感のあるドラムとベース、ファズまみれのノイズをまきちらすギター、そして、ジムのヴォーカルによるUKらしいメロディ、楽曲の構成要素はどれも同じなのだけど、曲が進むにつれて、このサウンドが生理的に親密なものになっていくというか、包まれていくような印象がある。

そのなかでもアコースティック・ギターの“Cut Dead”は一際変わった楽曲だが、当然のことながら“In A Hole”では再び爆音が鳴り響く。ウィリアムのギターは再びフィードバックの嵐を巻き起こし、曲が始まるかと思ったら、イントロをトチってしまったようで、もう1回。2回目はまた違うフィードバック・サウンドから楽曲に突入して、ノイズの壁を積み上げていく。そう、再現ライヴとは言いつつも、そこはジーザズ&メリー・チェインである。お行儀よくサウンドをなぞるだけのライヴとは違う。その時々で変わるフィードバック・サウンドを乗りこなしながら、金字塔となったアルバムに再び生命を吹き込んでいく、そんな趣きがある。あっという間に“Taste Of Cindy”が終わり、大きな歓声が上がったのは、アルバムからの先行シングルだった“Never Understond”だ。曲の最後ではウィリアムは身体を揺らして、アンプとの距離を測ってフィードバックを巻き起こしている。

ウィリアムがフィルターのペダルをいじくりまくっていた“Inside Me”から、“Soweing Seeds”を挟んで、爆裂ドラムが炸裂した“My Little Underground”と、ライヴもいよいよ終盤へ。ウィリアムのギターが常にハウリングを起こしているような“Something’s Wrong”を経て、最後の曲“It’s So Hard”になだれ込む。「次の曲が『サイコキャンディ』の最後の曲なんだ。来てくれてありがとう。楽しんでもらえたことを願ってるよ」とジムは語り、最後の最後まで混沌としたノイズを繰り出してライヴは終わった。再現ライヴと言っても、特別な演出はないし、感傷的なMCがあるわけでもない。ジーザス&メリー・チェインが、ジーザス&メリー・チェインでしかあり得ないサウンドをそのまま叩きつける、そういうライヴだった。そして、30年前に生まれた衝撃は、今もなお衝撃であることを雄弁に物語る、そんなライヴだった。

Text by Takuya Furukawa

セットリスト
April Skies
Head On
Blues From a Gun
Some Candy Talking
Nine Million Rainy Days
Reverence
Upside Down

Just Like Honey
The Living End
Taste the Floor
The Hardest Walk
Cut Dead
In a Hole
Taste of Cindy
Never Understand
Inside Me
Sowing Seeds
My Little Underground
You Trip Me Up
Something’s Wrong
It’s So Hard

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