tumblr_nwmnp2VM9Z1qii3jvo1_1280うず高く積まれた現金、美しいマニキュアや完璧なヘアスタイリングを施し、何百万もの賛辞を与えられ、神から与えられたその美しい声という才能でアデルはすべてを手に入れたかのようだが、それでもアデルでいることには困難もつきまとうであろう。2011年リリースのアルバム『21』は、UKチャート史上4番目という絶大なセールスを記録し、音楽史上最も成功したアルバムの1つとなったが、そうしたアルバムの次回作をリリースするというのは恐怖以外の何物でもないだろう。たとえ、それがナンバーワンになるのは確実だとわかっていたとしてもだ。

アルバム『25』では、27歳のアデルがそのようなジレンマに対して、聡明な答えを出している。斬新ではないものの、間違いなく価値のある作品だ。それはまるで、安全にゲームを進め、さらに肘当てやヘルメットで完全装備しているかのようである。

アデルの洗練された感情のこもったヴォーカルは、予想されたように全11曲すべての中心となっており、ムーディなバラードから、さながらウエストエンドでショーを見ているかのようなスモーキーでグルーヴィーなジャズ・チューンまで滑らかに進んで行く。『25』は、フリートウッド・マックが1979年にリリースした『牙 (タスク)』のような実験的作品でもなく、ファッショナブルなヒップホップが並んでいるわけでもない。どの曲にも、変化球的なものは感じられないので、コアなファンにとっては胸をなでおろすような作品かもしれない。

『25』を聴き進めていくと” Send My Love (To Your New Lover)”に驚かされる。ポップ界の巨匠マックス・マーティン(ブリトニー・スピアーズからバックストリート・ボーイズ、ケイティ・ペリー、テイラー・スウィフトまで、数多くのアーティストの楽曲を手掛けている)と共に多忙なスケジュールの中、ソフトコアのM.I.A.の様なサウンドを生み出した。爽やかなダンスホール・コーラスと共に、元恋人とそのセックス・フレンドの幸せを祈ると歌い上げ、まるで楽しんでいる様に聞こえる。

しかし、その後、悪びれない様子で” Rolling In The Deep”スタイルのドラマチックな楽曲に戻り、これがこのアルバムの見せ場となる。キャンドル・ライトのような神秘主義に包まれ、グレゴリオ聖歌のささやきと共に、” I Miss You”でアデルは完全にフローレンス・ウェルチと化している(当然、以前フローレンス・アンド・ザ・、マシーンの楽曲をプロデュースしていたポール・エプワースが共作者を務めている)。滑らかなドゥーム・ポップの曲調で彼女は恋人に「kiss me back to life(キスして私を生き返らせて)」とせきたてる。”River Lea”も同様に空虚な雰囲気の中を続いていく。デンジャー・マウスによるプロデュースの気取った感じのモダン・ゴスペルは、アデルのルーツのトッテナムを意識したという。”Water Under The Bridge”にはしかし、さらに大げさな言葉が並んでおり、アデルは元恋人にもう1つのドラマチックな日記の内容を歌いかけている。

彼女の声に焦点をあてると、最も素晴らしいのは何段階かトーンを下げる時である。”Million Years Ago”では、優しく張られたギターの弦に反して、アデルは1950年代のジャズ・ピンナップ、ジュリー・ロンドンのように静かな官能性を披露する。これが素晴らしく親密な仕上がりになっている。

リスナーは、これらすべてが無難すぎるという気持ちを振り払うことはできないだろう。アデルとそのチームが現時点で3000万枚売り上げたアルバムの「勝利の方程式」に従ったことを非難することはできない――『29』での進化に期待しよう。

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