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91be6bdeポップ・ミュージックとはペルソナ(仮面)を創り上げて投影する媒体であるため、概してその裏側に隠された現実を知れば知るほど、その魅力は減っていくことになる。FKAツイッグスの私生活(主に『トワイライト』シリーズの人気俳優、ロバート・パティンソンとの交際)に世間の注目が集まるなか、そのベールが過度に引き剥がされてしまうことで、本来の非凡な独創性を持ったポップ・アーティストとしてではなく、一俳優の婚約者としての彼女がより有名になってしまうのでは、という懸念が生じるのも無理はないだろう。しかし、今回突如として発表された、5曲を収録するこのEP『M3LL155X』が何かを証明するものだとしたら、それは本名をターリア・バーネットという彼女が自身の音楽やイメージ、さらには私たちがどうこの作品を受け止めるべきかということまでを、完璧にコントロールしているという事実である。

すでにEP『M3LL155X』の16分におよぶ素晴らしいショート・フィルムを見た読者も多いことだろう。リアーナのお粗末なミュージック・ビデオについて何千語にものぼる解説記事が書かれる世の中にあって、FKAツイッグスは、それについて論じ、伝える価値のある、大胆で刺激的な文字通りの芸術作品を考え出し、監督したのだ。嬉しいことに、この素晴らしい映像の音源は、どれも見事な仕上がりとなっている。FKAツイッグスが「メリッサ」と呼ぶ、自身の「内に秘めた女性としてのエネルギー」をもとに名付けられた『M3LL155X』が収録している5曲は、音楽的にもテーマ的にも結びつき、全体的な統一感を醸し出している。単に次のアルバムまでの「つなぎ」としてリリースされたEPとは一味違うのだ。“Figure 8”では、彼女は無機質な電子音を背景に、支配者のように専制的に「the hardest slap that you’ve ever seen(あなたが見たこともないような激しい一撃)」を与える。一方で“I’m Your Doll”では、彼女が18歳の時に書いたという控えめで服従的な歌詞「Wind me up/Dress me up/Love me rough(私を興奮させて/飾りたてて/乱暴に愛して)」に乗せ、男の鋭く破壊的な目が、性的で感情的な服従を示す彼女の負ったダメージを見下ろしている。FKAツイッグスがこの歌詞を書いてから長い月日が経ったが、彼女に期待できるものは変わっていない。“Glass & Patron”で、彼女は「I wait all week for a moment’s break away from being told who I am(一週間ずっと、私が誰なのかを思い知らされることから逃げられる瞬間を待っているの)」と歌い、無名の10代であろうと、注目を浴びるポップ・スターであろうと、変わることのない気持ちを吐き出している。

しかし、FKAツイッグスは、自分が誰であり何をしているのかを、しっかりと分かっている。『M3LL155X』のショート・フィルムの大部分で、彼女の体には男性の視線がまとわりついているが、最終的に彼らは怖気づくことになる。 “In Time”でしなやかな90年代R&Bが流れる中、彼女は比喩的な破水を起こす。その時、彼女を観察する男の顔に一瞬表れる表情が多くを語っている。男は単純化された女性の性を求めているのであって、厄介な真実は欲しくないのだ。しかし、FKAツイッグスがそんなものを与えることは、決してないのだろう。(バリー・ニコルソン)

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