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1月10日にデヴィッド・ボウイが亡くなってから1周忌を迎えたのを受けて、長年にわたって共同作業をしてきたプロデューサーのトニー・ヴィスコンティは長文のテキストを公開している。

デヴィッド・ボウイは69歳の誕生日である2016年1月8日に遺作となった『★(ブラックスター)』をリリースし、その2日後の1月10日にガンとの闘病の末、亡くなっている。

トニー・ヴィスコンティは現地時間1月10日、自身のフェイスブックに長文のテキストを投稿し、1年前の出来事を振り返っている。

全文訳は以下の通り。

「2016年1月10日 – 最悪のネクスト・デイ

トロントのホテルでぐっすりと眠っていたら、午前2時頃、携帯のメールでずっと電話が光りだした。メッセージはどれも同じ内容だった。デヴィッド・ボウイが亡くなった――、1年間ずっと恐れていたことだった。不思議なことに、僕は自分に向かって『おお、なんてことだ』と言って、眠りに戻った(前の日の夜、ホーリー・ホーリーのライヴで疲れ切っていたのだ)。ルームメイトだったサックス奏者のテリー・エドワーズは午前7時頃、やさしく僕を起こしてくれて、『トニー、恐れていたことが起こってしまった』と囁いてくれた。数分後、ウッディー・ウッドマンジーが部屋に入ってきて、僕を励まそうとしてくれた。僕のバンドのホーリー・ホーリーは、デヴィッドが末期症状にあることを知らなかった。僕は1年前に『★(ブラックスター)』のレコーディングについて一切の詳細を明かさない守秘義務契約にサインしていた(必要だったわけではないのだけれど)。バンドみんなのショックは当然のことながら大きなものだった。2日前、彼らはアルバムがリリースされたと聞いて、すごく喜んでいた、僕もね(僕らは2015年からアルバム『世界を売った男』とウッディーと僕が制作に参加したデヴィッド・ボウイの名曲を演奏するトリビュート・バンドをやっていた。僕はシェパーズ・ブッシュ・エンパイアで“The Width Of A Circle”を演奏する映像をデヴィッドに見せて、彼は暗黙のうちにこのバンドを認めてくれた)。

1年前のことを振り返ると、知らせを知った時、僕はバンドと一緒にいて幸運だったと感じている。一人だったら、完全に打ちのめされていただろうから。完全にね。僕らは前の晩に入れなかった人々のために2日目の公演をやるか打診されていた。僕らはその場ですぐにツアーを終わらせたほうがいいか、最後の公演をやるのか、話し合わなければならなかった。その偉大なる人物への僕らの思いと愛情、そして、最初の晩の熱狂的な公演に来てくれたトロントの素晴らしい観客を考慮すると、答えは一つしかなかった。それで、僕らは演奏したんだけど、まったくいつもと違うライヴになった。ウッディーと僕は演奏する前に観客に対して、僕らの親愛なる友人の人生を一緒に祝福してくれることへの感謝を伝えることにした(それぞれの個人的な悲しみに散り散りになるくらいだったらね。まあ、もちろん、その後そうなったんだけれども)。当然、観客には涙を堪えきれない人がいた。でも、僕らバンドとオーディエンスはお互いにみんなで助け合ったんだ。

そして、悲しみはとてもリアルなものだった。コントロールなどできなかった。この1年間、感情の面ではローラーコースターに乗ったようなもので、多くの人がそうだったことも知っている。いつも頭の中でデヴィッドに話し掛けるんだ。いまだに折り合いをつけるのはすごく難しい。彼の晩年は活気のある、クリエイティヴなものだった。『★(ブラックスター)』の制作は思いつきのものなんかじゃなく、ゴシック様式の大聖堂を建設するような作業であることをどの瞬間も分かっていた。デヴィッドは『ザ・ネクスト・デイ』でも制作を楽しんでいたし、精力的だった。でも、『★(ブラックスター)』では更に強く、ポジティヴで、クリエイティヴィティに溢れていた。僕らのチーム、バンド、技術者、そして、スタジオを訪れた全員がお互いにスタジオで目配せしていた。これは本当なのだろうか?と。シングルの“Blackstar”と“Lazarus”が公開されて、アルバムがリリースされた時、僕らはみんなと一緒にまさにお祝いしている感じだった! 最後には(ほんの少しだけど)そのことについても話をした。デヴィッド・ボウイの新しい音源のニュースに世界中で喜びが巻き起こったんだ。

ここらで終わりにしようと思う。今後も僕はデヴィッドが亡くなったことを受け入れようとするだろう。この365日、あらゆる段階の悲しみを経験してきた、怒りも含めてね。もちろん、その精神においては、彼は僕たちを置き去りにしたわけじゃない。僕らは彼と同じ時代に暮らすことができて幸運だった。僕らは彼と出会い、彼が歌ったり話したりするのを聞き、彼とハグをした。僕らは彼を敬愛してきたし、彼を毎日思い出すことになるだろう。彼はその生涯において伝説だったし、永遠に伝説であり続けるだろう。でも、彼は僕の友人でもあったんだ。彼のことが心から恋しいよ」

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