GETTY

Photo: GETTY

今年2月にケイティ・ペリーが『ウィットネス』からの最初の楽曲となる、ウルトラキャッチーな“Chained to the Rhythm” をリリースした際、それは何かが生まれ変わったようだった。2010年にリリースされた、パーティー後のひどい会場で目覚める様子を描いた“Last Friday Night (T.G.I.F.)”の裏側で、ポップ界のメガスターは現代政治に目覚め、ソーシャル・メディアでの極端なフィードバックの有毒性や、個人の自由に迫る懸念を語っていた(「さあ、繰り返すのよ/ボロボロのゾンビみたいによろけながら/そうよ、私たちは自由でしょ/飲んで、これは私のおごり」)。このシングルはケイティ・ペリーが「意義のあるポップ・ミュージック」と巧みに表現した新たな時代の到来を約束していた。当時、彼女のツイッターのプロフィールは「アーティスト、活動家、意識を」と書かれていた。

それから4カ月後の今、ツイッターのプロフィールにはこう書かれている。「私は何も知らない」。何が起こったのだろう? 「その言葉の本当のところはね」と、これまでの長い旅の末に彼女は語っている。「いつだって私が知っていることというのは受け取ったものだと思ってるの」どこから受け取ったものなのか? 「宇宙からよ」と彼女は答えている。

ケイティ・ペリーがロンドンにいる時間は24時間にも満たなかった。真夜中にウェスト・エンドにある5つ星ホテルで会った際、彼女はとても興奮している様子だった。足元はスティレット・ヒールで、シルバーの角張ったオートクチュールのジャンプスーツをまとい、幾何学的なブルーのアイシャドウをつけていた。まるでアンドロイドのような姿で活発に動き、ホテルのスタッフがスイッチをつけるのに苦労する間にカニエ・ウェストの“All Of The Lights”を力強く歌ってジャンプしながら部屋に入っていった。

彼女は部屋を一回りすると部屋の隅にマイクがしまってあることに気づき、それを持ってきて、部屋にいた6人のためにタレント番組のモノマネを披露してくれた。動きを止めると、ボロネーゼが食べたいと言い、指にはめた5つの大きな指輪を外しながら取材を受けるためにブースに座った。それはまるで殴ってしまうかもしれないけど、歯は差し替えてあげる、とほのめかしているようだった。しばしば途中で話を止める時だけ、彼女が疲れている様子が見て取れた。「時差ボケしてるの。だから……」と彼女は話す。元気そうに見えると本人に伝えるとこう言った。「私は元気よ! いつだって元気ハツラツなの」

3時間前、ケイティ・ペリーはキングス・クロスにあるウォーター・ラッツで小規模のライヴを行った。ここは9年前に彼女がロンドン・デビューを飾った場所だ。貴重とも言えるほどヒット曲を次々に披露すると同時に(間違いなく全部知っている曲だ)、彼女は自分の携帯電話をファンに渡してライヴを最初から最後まで中継するように頼んでいた。マンチェスターの爆発事件の被害者に追悼の意を表明した際は涙を流し、30代で経験する「美しい合意の上でのセックス」の美徳を強調し、確固たる意志で長々と語り続けた。少し変わったことや議論の的になること、または他と違ったことを言ったり行ったりするのをポップスターが恐れるなか、ケイティ・ペリーは恵まれた対抗手段と言える。

彼女の新しいアルバムには「美しい合意の上での」セックスについての曲も含まれている。“Tsunami”という曲だ。彼女は6月9日にリリースされた『ウィットネス』に含まれる曲の数々を「自身の身体の一部のよう」と述べている。「“Swish Swish”は中指、“Bon Appetit”はたぶん女性器、“Chained to the Rhythm”は精神ね。だから、これはある意味、精神的な解放や性的な解放、もしくは役に立たなかったネガティブなことからの解放になっている感じなの」

今回のアルバムに収録された15曲の良質なモダン・ポップの中で、ケイティ・ペリーは数々の一流アーティストたちとコラボしている(それに加えてサプライズもあった――UKのギークトロニカ・アーティストであるホット・チップが参加している曲がある)。また、ソングライターを務めているマックス・マーティンはテイラー・スウィフトの“Bad Blood”も手掛けており、これはケイティ・ペリーについて歌った曲だと広く信じられている。気まずくはないのだろうか? 「彼に代わって話すことはできないけど、でも、彼は(“Bad Blood”が何についての曲か)知らなかったのよ」とケイティ・ペリーは語っている。「彼に何をさせて、何をさせないかなんて、私が口出しすべきじゃないと思うしね。私はすごくフェアなの。ものすごくフェアなのよ。私は『あの人が好きじゃないから、そんなことさせないわ』なんて言う人間じゃないの。単に、あなたはあなた、自分で決めてって感じよ。マックスは大好きだわ。全キャリアをマックスと一緒にやってるの。私は彼の母親じゃないし、私が出会う前から彼は素晴らしかったわ。言ってることわかる? 彼は今後も素晴らしいわ」

事実、ケイティ・ペリーはアメリカのテレビ番組「ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・ジェームズ・ コーデン」の名物企画「カープール・カラオケ」でテイラー・スウィフトとの長きにわたって語られてきた確執について初めてコメントをしている。彼女はなぜ沈黙を破ることにしたのだろうか? 「そうね、ジェームズ・コーデンは私と全世界の人々をすごく安心させるのよ。誰も私側のストーリーについて訊いたことはなかったわ。それに、すべてのストーリーには3つの側面があるのよ。一方があって、もう一方があって、そして真実というね」 これはつまり、ケイティキャットやスウィフティー(ファンの呼称)でいられないということになる。自身の掲げる団結のメッセージに反するものにはならないのだろうか? 「そうは言ったけど、なにも私はブッダじゃないのよ。イラっとすることもあるわ。毎回、寛大に許せればいいけど、弱虫ってわけでもないわけ。特に誰かがいたいけな少女であるファンを使って私の人格を傷つけようとする時はね。ひどすぎるわ!」と彼女は語っている。

現在32歳のケイティ・ペリーは、内省の期間を経て新たに芽生えた見識を楽しんでいるようだ――彼女は2015年10月から2016年6月まで、自身で言うところの「ローファイ」モードだったという。「注目を浴びるタイミングと、注目をそらすのにふさわしいタイミングはよくわかってるわ」と彼女は語っている。「時々、人を引き付けないようにするのがうまいのよ。そして、アルバムをリリースする時は、さあ行こうって感じね。私は自分の役目を果たすためにここにいるの」 彼女は休暇期間中に哲学に夢中になったらしく(「ソクラテスにほれ込んじゃったの。この人、質問しすぎよ! 私みたいだわってね」)、言葉の端々には宇宙のメタファーや格言が散りばめられている。「 『長く生きるほど、いい生活を送れる。だから手放すな』という言葉があるの」と彼女は語っている。「いろんな秘訣を学んできたわけだけど、知恵は年齢と共についてくるの。私で言えば、基本的にたくさんの修正をやってきてるんだと思う」

立ち去るタイミングやとどまるタイミングを知っていることは、デヴィッド・ボウイがそうだったように、ケイティ・ペリーのように10年も走り続けている人間にとっては重要なことだ。彼女は次のように語っている。「まるでロケットみたいだった。私たち全員が火のついた車に乗ってて、高速道路を走ることに大興奮してるの。誰もが『何、これ? こんなもの見たことない! インスタグラムに投稿しよう!』って感じだったわ。でも、どこかで車から降りないと、炎に包まれてしまう。優雅にに変わっていく方法を身につけなきゃならないのよ」

実際のところ、彼女の創作物をつぶさに見てみると、ネオン・カラーで、クリームが吹き出す、カートゥーンのようなケイティ・ペリーがいる。「タイムカプセルのように4年間止まっていた私がいるの」と彼女は語っている。「私は20代が終わって、30代になった。これまでに多くのことを学んだし、感情的なサイクルを破って、もっと自分らしくあろうと決めたのよ。私はケイティ・ペリーでいることを愛しているし、ケイティ・ペリーについて言うことは何もない。でも、私はキャサリン・ハドソンとして生まれてきて、そのことをみんなも理解してきていると思うの。ありのままの自分を見せるのが怖かったから、自分自身だけど誇張してみせたキャラクターを作り上げたのよ」

ケイティ・ペリーは今年1月からお酒を1滴も飲んでいない。彼女は5年前からセラピーを受けており、2013年発表のサード・アルバム『プリズム』をリリースしてからは、彼女の両親とともにトランセンデンタル・メディテーションやグループ・セラピーに熱心に取り組んでいる。この経験について彼女は「素晴らしいわ。欧米的でもないしね」と語っている。ケイティ・ペリーと彼女の両親の関係は、長い間マスコミの興味を引いてきた。彼女の両親は新生クリスチャンで、“I Kissed A Girl”を出す以前の、宗教的なロック歌手であったケイティ・ペリーのキャリアのほうを、喜ばしく思っていただろう。現実はもっと微妙なものだと彼女は語る。

「私の両親は60代後半で、みんなが進化しているのを見てきて、現実と向き合ってるのよ。本当にみんなのことを誇りに思うわ。なぜなら、実のところ、私の家族の誰も契約にサインをしなかったの。的確な言葉を選びたいんだけど……私の家族は契約をしてないけど、そこから利益も得ていて、同時にそれに悩まされてもいるのよ」

ケイティ・ペリーがささやかな安らぎを求めるのも分かるだろう。彼女は、世界で最も有名な人物の1人であり(彼女はツイッターのフォロワー数で1位である)、ラッセル・ブランドと結婚し、そして離婚した時期も含んだこの10年近く、タブロイド紙のネタとなっている。ちなみに彼女は『NME』に対して、ラッセル・ブランドのことを「私の元夫」としか言わなかった。彼女は格好の標的として見られているのだ。例えば、最近のゴシップ記事では、彼女は修道女たちから魔女になったことを非難された。「あの修道女たちに神の恵みがありますように。彼女たちに本当に同情してるのよ。私が魔女の格好をしたからって、私が魔女になったってことじゃないわ」と彼女は答えている。「私がチートスの格好をしたからって、私がチートスになったってことじゃないわよね。私の言ってること、分かるでしょ?」

また、長きにわたるネット上での陰謀説もある。それはケイティ・ペリーが、実は殺害された美少女コンテストの女王、ジョンベネ・ラムジーであるというものだ。このジョンベネ殺害事件は、最近のドキュメンタリー番組でも取り上げられ、再び注目を浴びている。「あれは間違いなく、私についての記事で1番クレイジーなものよ」と、ケイティ・ペリーは語る。「たぶん、私が美少女コンテストに出場したように見える、グラマーなポーズをした小さい頃の写真があったから、そんな噂が出てきたと思うの。そうだとしても、とんでもないことよ」

最近では、ケイティ・ペリーは、大きく報道されたが今では嘘だと証明されたフェイク・ニュースで話題になった。それは「サタデー・ナイト・ライヴ」に出演した際、彼女の新曲“Bon Appétit”で共演しているミーゴスが、ドラァグ・クイーンと並んで映りたがらなかったというものだ。ソーシャル・メディアを狭い視野で語る人によると、おかしなことにケイティ・ペリーはフェイク・ニュースという現代の病の犠牲となっているようだ。彼女は事実をはっきりさせる必要性をちゃんと感じているのだろうか。「少しは自分のことを守ろうとも思うのよ。できる限りはね。それでも手に負えないほど、たくさんの事が起こるのよ」と彼女は語っている。「それにニュースのサイクルは24時間か、それ以下でしょ。物事は過ぎ去るし、インターネットを見た人すべてが全部を鵜呑みにはしないはずよ」

「人々への信頼」は、ケイティ・ペリーが何度も口にする言葉だ。“Chained To The Rhythm”がほのめかしているほど、彼女のアルバムは全体として政治的ではないが、その制作過程ではこの混乱した時代の影響を受けている。ケイティ・ペリーは、ヒラリー・クリントンの大統領選挙にのめり込み、民主党候補者だったヒラリー・クリントンのおそらく最も有名な支持者となった。そして、ある時にはケイティ・ペリー自身が、裸で投票に行く動画を公開した。それらがうまくいかなかった時、彼女はどう感じたのだろうか。「ああ、あれはうまくいったのよ」と、彼女はとても真面目に答える。えーっと、どういう意味で? 「ヒラリーは眠れる巨人を起こしたの。その巨人は彼女より、私より、そして今現在の誰よりも大きいのよ。でも素晴らしいことが起こっているの。それは何かと言うと、みんなが目を覚ましたってこと。そして、私たちは同じパターンで、同じ方法で、同じ快適さを持って、同じユートピアの中へと歩み続けていくのよ。私たちは目を覚ましたし、意見を声に出してるし、今までよりも学んでるわ。最近はバンドのメンバーの名前より、イギリスの国会議員やアメリカの上院議員の名前を知っている。これが本来のあるべき姿なのよ。なぜなら、そういった人たちが、私たちの生活を実際に変える手助けになるんだから、時にはね」

ケイティ・ペリーの政治への関与は、ブラック・ライヴ・マターなどの国民運動の高まりや、ポップ・カルチャー界で増加する、社会的・政治的な目覚めと重なっている。ケイティ・ペリーがいつ「目覚めた」のかを問う記事が数えきれないほどある。では、いつ目覚めたのか。「とても面白いんだけど、私たちは、いつ目覚めるか競わさせられてるって感じがしない?」と彼女は問いかける。しかし、彼女は自ら進んでこのレースに参加したのではないだろうか。「まあそうなんだけど、途中で気がついたの。行き先なんてないってね。旅みたいなものなのよ。私の言ってること、分かる? この『目覚め』のスタートラインはどこで、ゴールラインはどこなのかを教えてくれる人っているのかしら」

これこそ「私は何も知らない」という一例だ。それは素晴らしい受け答えだった。しかし、ケイティ・ペリーは楽しいことも、苦しいことも本当に経験してきた人なのだろう。彼女は面白くて、魅力的で、エネルギッシュで、時差ボケだ。そして明らかな事実がある。それはポップ・ミュージックの世界は、彼女がいることで、よりよい場所になっているということだ。きっと宇宙に支配されているという彼女の持論が、彼女をありのままにさせているのだろう。彼女は2015年スーパーボウルのハーフタイム・ショウという人生の大一番となる舞台にサメのコスチュームを着た風変わりなダンサーを登場させて注目を浴びた。今年のブリット・アウォーズでは、家のコスチュームを着たダンサーをステージに並べて同じように世間の目を引いた。彼女の他に一体誰が、そのようなことをできるのだろうか。「そうね、知らないわ」と彼女は微笑む。「私は完璧じゃなくていいの。完璧であろうとしたこともないし、答えを全部知ってるようなふりをしたこともないわ。私はいつだって未完成なのよ。精神的にも、肉体的にも、音楽的にも、私はここまでやってきて、そしてこれからも進んでいくわ。いつも自分自身にゴールなんかないって言い聞かせてるの。それで全然構わないのよ」

リリース詳細

KatyPerry-WITNESS

ケイティ・ペリー
ニュー・アルバム『ウィットネス』
2017年6月9日(金)世界同時発売中
『ウィットネス ~スペシャル・プライス・エディション』(CD) UICC-90005 / 2,200円(税抜)
『ウィットネス ~デラックス・エディション』(CD+DVD) UICC-90006 / 3,100円(税抜)
1.ウィットネス / Witness
2.ヘイ・ヘイ・ヘイ / Hey Hey Hey
3.ルーレット / Roulette
4.スウィッシュ・スウィッシュ feat. ニッキー・ミナージュ / Swish Swish feat. Nicki Minaj
5.デジャヴ / Deja Vu
6.パワー / Power
7.マインド・メイズ / Mind Maze
8.ミス・ユー・モア / Miss You More
9.チェーン・トゥ・ザ・リズム~これがわたしイズム~ feat. スキップ・マーリー / Chained to the Rhythm feat. Skip Marley ★シングル
10.ツナミ / Tsunami
11.ボナペティ feat. ミーゴス / Bon Appetit feat. Migos ★シングル
12.ビガー・ザン・ミー / Bigger Than Me
13.セイヴ・アズ・ドラフト / Save As Draft
14.ペンデュラム / Pendulum
15.イントゥ・ミー・ユー・シー / Into Me You See
16.ダンス・ウィズ・ザ・デヴィル / Dance With The Devil 海外デラックス盤&日本盤ボーナス・トラック
17.アクト・マイ・エイジ / Act My Age 海外デラックス盤&日本盤ボーナス・トラック

Copyright © 2017 Time Inc (UK) Limited. NME is a registered trademark of Time Inc (UK) Limited being used under licence.

関連タグ