10位 SUM 41(8/20 SONIC STAGE)

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Photo: (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


往年のポップパンク勢が揃い踏みした日曜日のソニック・ステージのヘッドライナーを務めたのは、昨年アルコール依存症から見事な復活を果たしたフロントマンのデリック・ウィブリー率いるSUM 41である。1曲目の“The Hell Song”に始まり、最後を飾った”Still Waiting“まで新作からの楽曲を挟みながら自身のベストといえるセットリストを披露してくれたSUM 41だが、すっかり手慣れたオーディエンスの煽り方しかり、往年を彷彿とさせるデリックの力強いヴォーカルの復活しかり、終始力強く観客を牽引して行く様はさすがの一言である。途中のドラム・ソロでは、7月に亡くなったリンキン・パークのチェスターへのトリビュートとして彼らの“Faint”と“One Step Closer“をカヴァーするという感動的な展開もあり、ポップパンクの祭典のフィナーレに完璧な形で花を添えてくれた。

9位 ロイヤル・ブラッド(8/20 MARINE STAGE)

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曇り空のマリン・ステージに黒ずくめのTシャツ姿のマイクと同じく黒基調でトレードマークのキャップを被ったベンの2人が姿を現す。ドラムキットとアンプとマイクスタンド、それしかステージにはない。しかし、この最小限にして最大のロックンロールが日本でもスタジアム空間で見事に機能していた。最新作からの“Where Are You Now?”で幕を開けたそのライヴは、ヘヴィ・サウンドのカタルシスを生み出し、中盤の“Little Monster”のドラム・ソロの際にはヴォーカル&ベースのマイクがビデオカメラを自ら抱えてオーディエンス全体を映すなんていうオチャメな側面も見せてくれる。終盤は彼らのキャリアを決定づけることとなったデビュー作から“Figure It Out”や“Ten Tonne Skeleton”、“Out Of the Black”の3連打。シーンに登場した時からライヴについては太鼓判の押せる存在だったが、マリンの広大な空間で観られるその姿は格別なものだった。

8位 ブラック・アイド・ピーズ(8/19 MARINE STAGE)

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直前まで降っていた雨も上がり、スクリーンにブラック・アイド・ピーズの姿が映し出されると、10年ぶりにマリン・ステージに帰ってきた3人にオーディエンスからは大歓声が上がる。1曲目から“Let’s Get Started”を披露し、ウィルの「イチ、ニ、サン、シー」に続いて“Pump It”、“Boom Boom Pow”と冒頭からアンセムを投下してくれる彼らに、復活を待ちわびていたファンのテンションは早くも最高潮へと向かっていく。ウィルの巧みな日本語MCといい、オーディエンスのツボをどこまでも心得ている人たちである。ファーギーの不在は小さくなかったものの、終盤には「キング・オブ・K-POP」と紹介してCLを呼び込み共に“Where Is The Love”を披露。冒頭からオーディエンスのヴォルテージを下げることがなかった3人のエンターテイナーによるショウは、CLと共に披露したラスト曲“I Gotta Feeling”で最高のフィナーレを迎えていた。

7位 リアム・ギャラガー(8/18 SONIC MANIA)

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リアム・ギャラガーほど、ステージに立っているだけで意味をなしてしまうアーティストはそうはいないだろう。“Fuckin’ In The Bushes”のイントロが鳴り響く中で満を持して登場したリアムを出迎えた怒号とも形容できる大歓声が、いかに復活を待ち侘びられていたかを物語っていた。“Rock n’ Roll Star“に“Morning Glory“というオアシス時代のアンセムで幕を開けたセットリストだが、中盤に挟み込まれるのは、数カ月後にリリースを控えたソロ・デビュー作『アズ・ユー・ワー』の楽曲群である。まだ見ぬ新作から惜しげもなく楽曲を披露しつつ、最後は本国イギリスでもなかなか見られない“Live Forever“と“Wonderwall“の2連発。彼自身、ソロよりもオアシスがいいと言っているが、なによりもリアムというフロントマンがいい、ということを月並みだが思わずにはいられない。“Wonderwall“の後の歌ってやったぜというあの表情、最高だった。

6位 ザラ・ラーソン(8/20 MOUNTAIN STAGE)

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ステージに登場した彼女のブロンドの髪が送風機によって揺れている。この日の衣装はサマーソニックのオフィシャルTシャツに、その健康的な脚を惜しげもなく披露するホットパンツ。自然体、だけれど、そこには圧倒的な優雅さが伴っている。まさに普通の19歳とポップスターが驚くほど当然のこととして同居しているのがザラ・ラーソンその人である。“Never Forget You”の歌い出しと共に登場した彼女は、持ち前のパワフルな歌声でヒット曲の数々を披露していく。エド・シーランが作曲に関わった“Don’t Let Me Be Yours”の途中で“Shape of You”をカヴァーする遊び心を見せたかと思えば、クリーン・バンディットとの“Symphony”を我が物顔で歌い、ラストの“Lush Life”に突入したその瞬間、地球規模のポップ・ミュージックが生み出した会場の一体感が遂にピークを迎えていた。

5位 カルヴィン・ハリス(8/19 MARINE STAGE)

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雨も上がって踊るには好都合の闇夜の中、ナイトクラブのような様相を呈したマリン・ステージに世界で最も稼ぐトップDJが降臨する。というものの、高くそびえ立つDJセットの上にいる彼はそのシルエットを確認するのが精一杯。“C.U.B.A.”や“Bounce”などのシングル曲を中心に据えながら矢継ぎ早に曲を繋いでいき、“This Is What You Came For”でこの日最初のハイライトを迎える。このままバンガーを連発していけば、彼の場合、熱狂を生み出すのは簡単だろうが、そこは現在の自身の方向性を反映してみせる。メジャー・レイザーを3曲も流したかと思えば、スヌープ・ドッグの“Still D.R.E.”や“Drop It Like It’s Hot”をプレイするし、DJキャレッドの“All I Do Is Win”、トラヴィス・スコットの“Antidote”なども織り交ぜていく。もちろん、クライマックスではヒット曲の数々を投入していくことになるのだが、彼のキャリアと現在のモードを非常に感じさせてくれるステージだった。

4位 セイント・ヴィンセント(8/19 HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER)

Kazumichi Kokei

Photo: Kazumichi Kokei


10月中旬から本格的に始まるツアーの初日となるこのステージは、彼女の言葉通り「ジャパン・オンリーの特別なショー」だった。ステージ上にはセイント・ヴィンセント一人のみ。黒髪のショートボブにイメチェンした彼女はヒョウ柄のレオタードに黒いタイツ姿という挑発的な衣装で、エレキ・ギターを抱えて高台に仁王立ちうる。“Now, Now”から始まったこのライヴでは、彼女の奏でる歌とギター、そして無機質な打ち込みビートのみが流れ続ける。パステルカラーを多用した鮮烈な映像の中でセイント・ヴィンセントは電話のケーキを潰したり、目隠したブロンド女性の上に座ったりしているのだが、実物の彼女は無表情で甘く歌い上げたかと思えば、テクニカルにギターをかき鳴らしていく。中盤“Cruel”の盛り上がりは言うまでもないし、本編ラストの“Digital Witness”の後にはアンコールも。再び登場した彼女は全世界待望の新曲“Los Ageless”を披露し、既に発表されているシングル“New York”で観客を熱狂の渦に呑み込みながら、颯爽とステージから立ち去っていったのだった。

3位 カサビアン(8/18 SONIC MANIA)

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Photo: (C)SONICMANIA All Rights Reserved.


UKのギター・ミュージック・シーンも最近は元気がないように見えるかもしれない。しかし、今年もレディング&リーズでもヘッドライナーを務めたカサビアンは、そんな状況下で気を吐いているバンドの一つなのは言うまでもない。ギター・ロックの救済を謳った最新作の“Ill Ray(The King)”からスタートしたステージで、トム・ミーガンとサージ・ピッツォーノはのっけから観客を扇動して“Eaz-Eh”ではジャンプを促し、野暮ったくも愛らしい相変わらずのステージ巧者ぶりを発揮していく。中盤で披露された“Club Foot“はもちろんのこと、最新作の“Comeback Kid”でもシンガロングが巻き起こっていたことに彼らの底力を感じる。最後の“Fire”然り、定期的にアンセムを生み出していることが彼らの実力を物語っている。やっぱりUKのギター・バンドって愛さずにはいられない、そんなことを痛感させてくれるライヴだった。

2位 デュア・リパ(8/20 MOUNTAIN STAGE)

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まず登場した瞬間からそのオーラに目をみはる。まるで指先の一本一本にまで神経を張り巡らているかのような一挙手一投足で、デュア・リパは序盤から“Hotter Than Hell”、“Blow Your Mind (Mwah)”、“Lost In Your Light”とヒット・シングルを次々に繰り出していく。低音の効いたボーカルや佇まいはクールなのだが、髪を振り乱すたびにその奥底に秘められた感情が垣間見れる。そしてマーティン・ギャリックスとの“Scared To Be Lonely”で熱を帯びたオーディエンスのテンションは、全英チャートを前日に制したばかりの“New Rules”で最高潮に。ポップ・ミュージックというのは起用するプロデューサーをはじめ、インスタのアカウントからミュージック・ビデオの作りまで、様々な要素を総動員して、そのカルチャーは作られている。しかし、この日のデュア・リパのパフォーマンスはその中央にいるのが彼女であれば大丈夫とでもいうような説得力に満ちていた。最後に披露されたデビュー曲“”Be the One”はその勝利宣言のようだった。

1位 フー・ファイターズ(8/20 MARINE STAGE)

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リック・アストリーのあの曲をグランジ風(というよりも“Smells Like Teen Spirit”風)にカヴァーして、スタジアム全体を笑顔に変えてしまう。そんなことをできる人が他にいるだろうか? もっとやってほしい曲はあったかもしれない。フーファイ史上、最高の来日公演ではなかったかもしれない。でも、そこに満ちていたのはやっぱり愛で、ギター・ミュージックへの、バンドへの、ライヴという現場への、ロックへの愛だった。宣言していた通り、終演時間を超えても演奏を続け、“Everlong”の演奏中に花火が始まってしまうという幕切れも含めて、まさにフーファイであり、デイヴ・グロールだったし、初っ端の“All My Life”、“Learn to Fly”、“The Pretender”、“My Hero”という怒涛の展開も含めてやっぱりフーファイはすごかった。現在の音楽シーンはチャートとライヴ・シーンがパラレルで動いていて、チャートやストリーミングの数字では反映できないものを欧米ではライヴに見出している。カサビアンもそうだったけれど、その意味でフーファイは21世紀のライヴ・バンドとしてできる限り最高のものを見せてくれたのだ。

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