20位 レディー・ガガ『ジョアン』

Lady Gaga-Joanne
過剰なほどにコンセプチュアルだった2013年の『アートポップ』に続く、通算4作目のアルバムは、見た目もサウンドも全くもってレディー・ガガのアルバムだとは思えない作品となったのと引き替えに、最高峰の輝かしいコラボレーターたちを起用した今作は、初めてのステファニー・ジャーマノッタらしいアルバムであるかのように感じられる。よりパーソナルで剥き出しの、ソフトロックなサウンドへの転向が、肉のオートクチュールを纏ったマザー・モンスターの仮面に隠された一人の女性の姿を曝け出しているのだ。ガガのディーヴァとしての強い欲求は、”Perfect Illusion”や “Come to Mama”と言った楽曲において拘束されることなく自由に表現されているが、最も力強く、そして最も長く耳に余韻が残るのは『ジョアン』におけるより静謐で内省的な楽曲の数々である。


19位 ホワイト・ラング『パラダイス』

White Lung-Paradise
ライオット・ガール期のコートニー・ラヴと粋な文化評論家ジョーン・ディディオンを彷彿とさせる、唯一無二のフロントウーマンのミッシュ・ウェイ率いる、バンクーバー出身のカルト的パンクバンドであるホワイト・ラングにとって、通算4作目となるアルバムはこれまでで最もメインストリーム寄りであるかもしれないが、それでいて郊外のウェザースプーンで過ごすサタデー・ナイト並みに獰猛である。もちろんラヴソングのような趣きのパワー・バラードも収録されているが、イギリスの悪夢である連続殺人犯、フレデリックとローズマリーのウエスト夫妻について歌った楽曲も収録されている。また、腐敗的とも言える楽曲”Kiss Me When I Bleed”に挟み込まれる「トレーラーハウスで出産する」と叫ぶリリックは、今年随一の煽動的なリリックである。


18位 ティーガン・アンド・サラ『ラヴ・ユー・トゥ・デス』

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ティーガンとサラのクイン姉妹による、2013年の『ハートスローブ』における敏腕プロデューサーのグレッグ・カースティンとの出会いに端を発した、インディー・スクミンディーの女の子から甘くコーティングされたシンセポップ女王への変貌は、通算8作目となるアルバムで真に確立した。スマートかつ博識なアダルトポップである『ラヴ・ユー・トゥ・デス』は、双子のルーツやLGBTQのアイデンティティを捻じ曲げてはいない。晴れ晴れしい”BWU”では同性結婚についてスマートに歌い上げ、”Boyfriend”では「もうこれ以上あなたの秘密ではいたくないの」と切望する。確実に言えることはティーガン・アンド・サラはもうこれ以上誰の秘密でもないということだ。


17位 ドレイク『ヴューズ』

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20曲という途方もない楽曲数は、ドレイクが4枚目となる収録時間ギリギリのアルバムを制作することに躊躇しなかったことを示している。本質的にはこれまでのアルバムと同様、ドレイクでいることがどれほどタフであるかについて謳っているのだが、それを本作では徹底的なまでに血気盛んなバンガーを介して、普遍的なドレイクのスタイルでやって見せている。サマー・アンセムである”One Dance”やリアーナをフィーチャーしたカジュアルなダンスホール・アンセムの”Too Good”に、並外れたバイブスを持ち合わせた”Controlla”。ああ、それからさりげなくボーナストラックとして収録されている”Hotline Bling”も。もちろん、このアルバムには不平不満が溢れているが、カナダの不平不満の王者はパーティー・グッズを発明したようだ。


16位 ダニー・ブラウン『アトロシティ・エキシビジョン』

Danny Brown
ハイになっての歯ぎしりや不気味な倦怠感に、自暴自棄になる程の堕落。デトロイト出身のラッパーであるダニー・ブラウンの通算5作目となるアルバムは、2016年の最も娯楽的なヒップホップ・アルバムであると同時に、最も不穏なアルバムでもある。例に漏れず、表面上は商業的だが、エキセントリックなビートに乗せたダニー・ブラウンの冒涜的で抜け目のないライムは、大方のラッパーたちの度肝を抜くはずだ。しかしながら、繰り返し聴き続けると、彼の精神異常を来した間抜けなペルソナの仮面は剥がれていき、聴き手は神経衰弱を耐え忍ぶ一人の男の声を聴いていたのだと気がつくのだ。


15位 カノ『メイド・イン・ザ・マナー』

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このアルバムは爆音で幕を開ける。6年間ラップ・ゲームから遠ざかっていたカノは、ヘヴィ・メタル調のリフが炸裂する”Hail”を携え、グライム・シーンに復帰することを宣言した。改めて然るべき自己紹介をしたカノは続けて、その名に恥じないアルバムを発表している。このタイトルは、時代と場所を象徴している。『メイド・イン・ザ・マナー』は、太陽の下、ブロック・パーティーを取り入れたロンドンのイーストエンドの社会史としても、D・ダブル・Eからの音楽的影響を落とし込んだアルバムとしても機能する上に、なかば疎遠になっている妹について歌った”Little Sis”など、パーソナルなアルバムでもある。その道の達人なのだ。


14位 ジェイミー・T『トリック』

Jamie T-Trick
2014年、5年にも及ぶ沈黙を経てジェイミー・Tは傑作『キャリー・オン・ザ・グランジ』を携え荒野から帰ってきた。我々の驚きを想像して欲しい。2年後にはもう新しいアルバムを出して、しかも前作よりも出来がよかったのだから。パンク、ラップ、ポップ、それぞれからの影響が縫い目なく融合された『トリック』は、創造主であるジェイミー・Tのカリスマ性が如実に現れている。アグレッシヴな“Solomon Eagle’”のような物語調の楽曲も、“Sign Of The Times”のような感情的なバラード曲も、“Drone Strike”のような奇妙で滑稽なシンガロンング曲も、“Tescoland”のようなザ・クラッシュへの厚かましいトリビュート曲と並んで心地よく同居しているのだ。キャリア10年目に突入したジェイミー・Tだが、相も変わらずエキサイティングな存在であることを示している。


13位 エンジェル・オルセン『マイ・ウーマン』

Angel Olesen-My Woman
ミズーリ州を出自とするエンジェル・オルセンは、魅力的な3枚目のアルバムをもって愛嬌のある伝統的なシンガー・ソングライターというレッテルを振り払った。フォークの大御所であるボニー・’プリンス’・ビリーのバックシンガーであった彼女は「かき鳴らされたギター」や「カントリーじみた感情表現」などでは括れない存在であることを証明してみせたのだ。エンジェル・オルセンは、しわがれ声で歌い上げるパワーポップ“Shut Up Kiss Me”で自分の居場所を見つけようともがき、サイケデリックなグラムロック、フリートウッド・マックを髣髴とさせるような感情のほとばしり、60年代のガール・グループの生意気さや、宇宙的な魂で、自分を落ち着かせようと言い聞かせる。そしてすべてが唯一無二の息を飲むような彼女のヴォーカルにスパイスを効かせているのだ。


12位 サンフラワー・ビーン『ヒューマン・セレモニー』

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2016年はニューヨークのロックシーンにとって当たり年だった。パーケイ・コーツやパブリック・アクセス・TV、ダイヴにザ・ブリタニーズ。さらにはザ・ストロークスですら新作のリリースに着手した。そんな中で、渦巻くようなサイケデリアに強烈なギターリフとシューゲイザー的ドリームポップをブレンドさせ、これまでの自分たちよりもはるかに優れた実力と確信をもって抜かりなく制作されたデビュー作を携えて最も強烈な旋風を巻き起こしたバンドこそ、ブルックリン出身の3人組、サンフラワー・ビーンだ。『ヒューマン・セレモニー』は完璧な作品で、早まってロックンロールの死亡記事を書いてしまっていた人々に対する解毒剤となったことに疑いの余地はないだろう。


11位 ビヨンセ『レモネード』

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蔑まれた女性の作品か、はたまた惜しみなく宣伝費をつぎ込んだ賜物か。楽曲がこれほどまでに素晴らしいのだから、そんなことは誰も気にしないだろう。ビヨンセは、6枚目となるアルバムであり、2013年の『ビヨンセ』以来、2枚目のヴィジュアル・アルバムとなった『レモネード』で、自身が周囲から期待されているような影響力を本当に持っていることを証明して見せた。作品は息を呑むほどに幅広いものとなっている。ビヨンセにとって初となるカントリー・ソングがあり、ジャック・ホワイトやケンドリック・ラマー、ファーザー・ジョン・ミスティらが参加し、「ブラック・ライヴズ・マター」を大いに支持していることも見てとれる。『レモネード』はビヨンセを、文化評論家でありながら、政治的な扇動家で、すべてにおいて超級で、あらゆる最前線で成功を収めるスーパーウーマンにのし上げたのだ。


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