40位 スーパー・ファーリー・アニマルズ “If You Don’t Want Me To Destroy You”


“If You Don’t Want Me To Destroy You”は、ウェールズ出身の折衷主義的なポップ・ミュージックのずば抜けた作り手であるスーパー・ファーリー・アニマルズの、不思議で素敵な世界観、その初期の姿を表した1曲である。この曲はグリフ・リーズとメンバーたちによる作品の中でも、最も夢見心地な名曲だ。エレキ・ギターのかすれた音が眠りを誘うようなメロディーを奏で、グリフ・リーズは甘く歌い上げる。「そして動物たちが君の周りに集まってきたら/君は時間を尋ねるの、それとも逃げ出し、すすり泣くの?」と。どこか調子が狂うが、完璧な曲だ。


39位 ザ・ブー・ラドリーズ “Lazarus”


型破りな音がごちゃ混ぜにされて見事に溶け合い、壮大な仕上がりをみせた“Lazarus”は、ザ・ブー・ラドリーズを革新的な音の使い手として位置付けた1曲だ。世界が公正に秩序立てられていたならば、“Lazarus”は聖書に登場する巨獣ベヒモスのように、チャートのトップに君臨するはずだった。悲しいことに、全英シングル・チャート40位以内にすら手が届かなかったが、ドラムの音やホルンの音色、セクシーなハーモニーが一体となって響き合う様は、ザ・ブー・ラドリーズの力が最盛期を迎えていたことの、紛れもない証明である。


38位 ジュリー・クルーズ “Falling”


“Falling”はアンジェロ・バダラメンティが作曲し、デヴィッド・リンチが作詞を担当した(インストゥルメンタル・バージョンは米国のTVドラマ「ツイン・ピークス」のテーマ曲だった)。その結果生まれたのは、どこかぞっとする、1950年代の香りがするバラードだった。しかし、デヴィッド・リンチの手がかかった作品であるということは、表向きとは裏腹に内側に何か暗いものがあることを意味している。歌っているジュリー・クルーズは歌手役で「ツイン・ピークス」に登場していたが、この曲の歌詞は劇中で殺されたキャラクター、ローラ・パーマーの言葉だというのが、世間の噂での定評となっている。


37位 ダフト・パンク “Around The World”


ギ=マニュエルとトーマ・バンガルテルのデュオ、ダフト・パンクは、繰り返すベース・ラインとヴォコーダーを使用したサビという枠組みを放棄せずに、まるでクラウト・ロックのようなダンス・トラックを生み出してみせた。ミシェル・ゴンドリーによるミュージック・ビデオは、ロボットやシンクロナイズド・スイマー、骸骨たちが音に乗って機械的な動きを繰り返すことにより、楽曲のコンセプトを表現している。まるで催眠術のようだ。


36位 マジー・スター “Fade Into You”


美しい魔法のようなワルツから、ホープ・サンドヴァルとデヴィッド・ロバックがデヴィッド・リンチの映像の数々を見てきたことと、古いカントリー・ソングをたくさん聴いてきたということがわかるだろう。1994年にリリースされたこの曲は、どこか別の時代と場所から送られてきた音のうねりのように思える。壮麗な悲しみで満たされた独特の声の持ち主であるホープ・サンドヴァルはこの曲について「これは信頼と、それを失うことについての歌なの」と語っている。


35位 ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ feat. カイリー・ミノーグ “Where The Wild Roses Grow”


“The Willow Garden”という古いフォーク・ソングからインスピレーションを受けたニック・ケイヴは、この曲の「不吉なデモを」カイリー・ミノーグのマネジメントに送っている(女声パートはニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズのブリクサ・バーゲルトが歌っている。確かに悪趣味だ)。カイリー・ミノーグの「関係者たち」は大変に腹を立てたが、長年ニック・ケイヴを崇拝していたカイリー・ミノーグは、このオファーを受けた。美女と野獣の邂逅と言わんばかりの、ニック・ケイヴの執念深さを感じるヴォーカルがカイリー・ミノーグの蜜のように甘いトーンに重なって、忘れ難い1曲に仕上がっている。


34位 ポーティスヘッド “Glory Box”


ポーティスヘッドのベス・ギボンズは、様々な男性服をまとい、男性役で“Glory Box”のミュージック・ビデオに登場しているが、それは人々の注意を引くために行ったのではない。愛について我慢の限界に達した女の、官能的で魅惑的なストーリーを歌にしたこの曲の中で、ベス・ギボンズの苦しく情熱的な声が主役であり、その声を包み込みんでいる、クラクラと目眩のするようなヴェルヴェットの伴奏に、情緒的な力を与えている。


33位 ザ・プロディジー “No Good (Start The Dance)”


リアム・ハウレットはこの曲をリリースすべきか相当迷っており、1980年代のヒット曲、“You’re No Good For Me”のケリー・チャールズのヴォーカルを高速にしたハイパーなサンプリングは、さすがにポップに崩しすぎではないかと思い悩んでいたと言われている。しかし、その過程を経た上で、あの薄汚れた多幸感と激しく打つ低音がたまらないザ・プロディジーのシングルの中でも最高の1枚と言える楽曲を世に送り出してくれたことは、ありがたいとしか言いようがない。


32位 スマッシング・パンプキンズ “1979”


すでにかなり詰め込み過ぎのアルバムになっていた『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』に、土壇場で加わった1曲だ。“1979” は、完成したアルバムの中でも間違いなく真の傑作だ。曲はニュー・オーダーのピーター・フックが弾きそうなベースラインと、ビリー・コーガンの溜息のループを中心に展開し、ぼんやりとしたノスタルジアが漂う。また、露骨に抑制を効かせるスタイルが、将来のスマッシング・パンプキンズの方向性を示唆している。


31位 マッシヴ・アタック “Unfinished Sympathy”


トリップ・ホップの開祖“Unfinished Sympathy”は、シャラ・ネルソンの割れんばかりの声量と、3D、マッシュルーム、ダディーGによる抑えたビートとカウベルで彩られた、非常に洗練されたヒップポップ・ソウルだ。この曲は、第一次湾岸戦争の最中、政治的に配慮してマッシヴという名義でリリースされており、2000年代においても、都会の洗練された人々の名指しするお気に入りアーティストとしての座をほしいままにしている。


30位 アンダーワールド “Born Slippy”


この曲が映画『トレインスポッティング』の重要なシーンのBGMとして選ばれたのは偶然ではない。カール・ハイドがソーホーで、視界がゆがむほど酔った晩に作られたこの曲の断片的な歌詞の世界は、サウンドでもそのまま表現されており、緩急自在に突っ走るその展開は、通りすがりの人々に大声で「ラガー、ラガー、ラガー(lager, lager, lager)」と呼びかけてしまうほどの泥酔状態を完璧に投影している。


29位 ブラー “Girls And Boys”


グランジに中指を突き立てるだけでは飽き足らず、デーモン・アルバーンと仲間たちは、快楽主義的なクラブ・カルチャー全般に対してもいちゃもんをつけたのだが、そのために制作されたのは彼らの曲の中でも、何と言うか、今までで最もクラブっぽい仕上がりのものだった。曲は、4つ打ちのビートと、デーモン・アルバーンによる学生の悪ノリのようなサビと、グレアム・コクソンの唸るようなギター・プレイがからみ合って進行していく。ブラーの曲で、まず踊りたくなって、考えるのが二の次だなんて初めてだ。


28位 フー・ファイターズ “Everlong”


一般に浸透したフー・ファイターズや、 「ロック界最高のいい人」 デイヴ・グロールのイメージに対して、“Everlong”はこれを排し、フー・ファイターズもニルヴァーナが貫いていたのと同様に、陰気で無秩序な存在であることを提示している。荒削りなギターのリフと、デイヴ・グロールによる不気味な歌い方が相まって、疑念と後悔が渦を巻いていく。“Everlong”はフー・ファイターズのこれまでの曲の中で恐らく最も売れた、純粋に胸を打つ作品の1つであろう。


27位 PJハーヴェイ “Down By The Water”


PJハーヴェイは、身体の器官から声を上げ、天才的にギターを掻き鳴らす妖精から、精神がおかしくなりそうな魅惑的な小悪魔へと姿を変えた。“Down By The Water”は、PJハーヴェイのキャリアにおいて今日までで最も純粋なポップ・ソングだが、その奥には、より複雑な何かが潜んでいる。この曲では幼児殺害のストーリーと失われた純潔さを歌っており、古いブルースからインスピレーションを受けたとのことだが、サウンドは紛れもなく、キャプテン・ビーフハートとクラブ音楽の融合だ。


26位 ウォーレン・G “Regulate”


Gファンク時代はそこまで長くは続かなかったが、スヌープ・ドッグが幾つかの良作を生み出し、この曲がなければ無名のままであったかもしれないウォーレン・Gに決定的瞬間が訪れるには十分であった。ドゥービー・ブラザーズとスティーリー・ダンのヴォーカルを務めたマイケル・マクドナルドの何とも滑らかな“I Keep Forgettin”の重厚なトラックの流れに乗って曲は進んでいく。そして、女性たちがウォーレン・Gに目を奪われて運転する車をぶつけ、困り果てていたウォーレン・Gに、故ネイト・ドッグが救いの手を差し伸べている。


25位 ザ・ヴァーヴ “History”


この曲はリチャード・アシュクロフトと長らく苦しんでいたメンバーたちが1度目の解散を決めた後にリリースされ、“History(過ぎ去ったこと)”は墓碑銘とも言えるものであったはずだ。歌詞の冒頭は幻視者の異名を持つ詩人、ウィリアム・ブレイクの作品『ロンドン』から引用し、墓碑銘にふさわしい崇高さを感じさせる1曲だった。しかし、ザ・ヴァーヴが再結成した際には、この曲におけるストリングスの使用が“Bittersweet Symphony”など将来のヒット曲への何らかの触媒となっていたことを、私たちに確信させたのである。


24位 ケリス “Caught Out There”


ケリスは「今はあんたなんか憎んでる!」という叫びで、完全に限定解除されたディーヴァたちの勢力の頂点に立っただけでなく、ザ・ネプチューンズのブレイクのきっかけを作った。後にポップス専門ラジオを牽引することとなる2人組、ザ・ネプチューンズは、隙間のあるビートやSF的なキーボード・サウンド、爆ぜるようなリズムを詰め込むことによって、独特な音の世界を作り出している。突然フィルターのかかった怒りの声へと変わる、ケリスの蜜のように甘いヴォーカルこそが、この曲をトップまで押し上げた要因だった。


23位 ジェフ・バックリィ “Last Goodbye”


豊穣ながらも後悔の念を帯びたこの曲は、ジェフ・バックリィの、この世代では他に存在しない、まばゆいばかりの才能にスポットライトを当ててくれる。しかし、それと同時に彼がどんなことを成し遂げるはずだったかという興味をかきたて、じれったい気持ちにもさせる。ジェフ・バックリィの早すぎる死を受けて、彼の他の作品と同様、この曲の歌詞にはかなりの痛ましさが上乗せされてしまったのだが、空に向かって伸びていく、彼の非の打ち所のないファルセットを聴いていると、そこには希望とも思えるものを感じずにいられない何かがあるのだ。


22位 ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ “Into My Arms”


アルバム『ザ・ボートマンズ・コール』でニック・ケイヴは、地獄に取り付かれたポスト・パンクから、傷心のピアノ・バラードの送り手へと激変した姿を見せている。“Into My Arms”は、愛とスピリチュアルな事柄を結びつけた穏やかな曲で、ニック・ケイヴが心の内を打ち明けている、素晴らしい作品のひとつである。さらに、インエクセスのヴォーカルであったマイケル・ハッチェンスの葬儀において、すべてのテレビ・カメラの電源を切る様にと希望した上でニック・ケイヴがこの曲を歌ったというエピソードが、より一層、人々の心に訴える曲となったのだ。


21位 オアシス “Live Forever”


衰退するグランジの残り火が消えゆく一方、ノエル・ギャラガーはカート・コバーンの虚無主義とは真逆の、挑戦的なまでに楽観的なこのナンバーを書いた。それはかなりの冒険であったが、成功を収めた。“Live Forever”のポジティヴな主張は、大衆の心を完全に捉え、リアム・ギャラガーの歌声は、日常からの脱出という不可能を再び可能にしてくれるように思わせたのだ。


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