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やっとだ。ついにリリースされた。あらゆる噂やよもやま話の末に、レディオヘッドの通算9作目となるニュー・アルバムが我々に届けられた。『ア・ムーン・シェイプト・プール』と題された本作は(素晴らしい)、ストリングスやピアノ、電子楽器、ジョニー・グリーンウッドの繊細なギター・ラインとトム・ヨークの洗練された詩が美しく組み合わされている。この作品から発見することのできる、いくつかの語るべきポイントについて見ていこう。

1. “True Love Waits”のスタジオ・バージョンがついに

バンドはファンからの人気が高いこの曲を20年以上にわたってライヴで演奏してきた。ライヴ・ヴァージョンで過去にリリースされたことがあるが、スタジオでレコーディングされたのは今回が初めてとなっている。出来栄えは? もちろん、とても素晴らしい。物憂げなピアノ演奏をバックにトム・ヨークの歌声は華麗に悲しげである。「And true love lives/On lollipops and crisps(本当の愛は/ロリーポップやポテトチップスに存在している)」という一節は本当に衝撃的に響き、もちろんのこと、この楽曲を成功に導いている。

2. “Identikit”もついに収録

この昔からの楽曲も正式にリリースされたことがなかった。“True Love Waits”と同じくらい古い曲だが、この曲が収録されるのも一大事である。ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラがレコーディングに参加しており、ダークでどこか不吉な演出のなか、トム・ヨークが「Broken hearts make it rain(失恋は雨を降らす)」とささやくように歌い、ジョニー・グリーンウッドの刺すようなギター・ラインが聴くものに緊張感をもたらす。

3. 実は本当の意味での新曲は3曲だけ

『ア・ムーン・シェイプト・プール』は基本的には、公式なスタジオ版でリリースされていない、過去に何らかの形で発表した楽曲のコレクションである。よって、完全なる新曲は、“Decks Dark”、“Glass Eyes”、“Tinker Tailer Soldier Sailor Rich Man Poor Man Beggar Thief”(このタイトルはもちろん1695年の童謡“Tinker Tailor”から取られている)のたった3曲だけになる。レディオヘッドはアイディアがなくなってきたのか、それともただファンを喜ばせたいだけなのか? どちらにしても、この3曲にはどれも、「脆弱性」と「回復力」という相反する要素があり、アルバムに本当の意味での新曲がほとんどなくても、レディオヘッドには十分に伝えるべきものがあるのだと証明してくれる。

4. これがレディオヘッドの最後の作品になるのか?

人気の高い“True Love Waits”、“Identikit”、“Present Tense”の3曲をバンドが届けてくれたことを受け、ファンはこれが最後の作品になるのではないのかと思っている。オーディエンスのお気に入りの楽曲が収録されたこのアルバムは、終焉のサインではないかと見られているのだ。しかし、レディオヘッドのやることだ。5年後(もしくはもっと早く)に『ア・ムーン・シェイプト・プール』とはまったく異なったアルバムをリリースしてファンを驚かすかもしれないし、この絶頂で幕引きをして、他のことに集中するかもれない。

5. トラック・リストはアルファベット順になっている

Google Playがアルバムの発売前にトラック・リストを掲載していたのだが(しかしすぐに止められた)、そこでファンがトラック・リストの順番を疑問に思っている。完全にアルファベット順になっているので間違いではないかという推測を呼んだのだ。しかし、正式なリリースでもアルファベット順になっている。結局のところ、トム・ヨークとメンバーたちは、「すべてのものはあるばき場所にある(Everything in its right place)」を好むのだ。

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